Leicaエクスペリエンスラボ

電子顕微鏡試料作製ワークショップ
レポートCase Studies

電顕用試料作製

理化学研究所 放射光科学総合研究センター RSC-兵庫県立大学リーディングプログラムセンター、日本顕微鏡学会 生体解析分科会主催、ライカマイクロシステムズ(株)共催により行われました、「電子顕微鏡試料作製ワークショップ 高圧凍結から広がるクライオSEMの世界」のレポートをお届けします。

開催日: 2015年 3月3日(火)、4日(水)

開催場所: 理化学研究所 放射光科学総合研究センター RSC-兵庫県立大学リーディングプログラムセンター

講師:

石原 あゆみ(理研・客員技師:ライカマイクロシステムズ株式会社)
伊藤 喜子(理研・客員研究員、兵庫県立大学大学院・客員教授、ライカマイクロシステムズ株式会社)
西野 有里先生(理研・客員研究員、兵庫県立大学大学院・特任講師)
宮澤 淳夫先生(理研・客員研究員、兵庫県立大学大学院・教授)

参加者: 3月3日 15名、 3月4日 12名

 

難易度の高い含水材料の電顕観察のために、凍結下で試料作製をおこなうクライオワークフローについてのワークショップを開催しました。経験豊富な講師と、クライオワークフローが実現できる国内唯一の設備を使うことで、実践的なワークショップが実現しました。

 

講義: 含水材料を電子顕微鏡で観察するための試料作製方法について

生物試料、培養細胞、エマルジョン、インクなどの含水材料を電子顕微鏡で観察するためには、試料に含まれた水分を除去しなければなりませんでした。しかし、凍結固定法を使えば水分を保持したままでの観察が可能になります。凍結固定法とは、試料を急速に凍結することにより、試料の構造を保持しながら固定を行う方法です。急速に凍結することにより、試料内の水分凍結により生ずる氷晶による構造破壊を最小限に抑えることができます。試料粒径が100nm以下のものには、凍結固定法の一種である浸漬凍結/氷包埋法が適しています。自動浸漬凍結装置  ライカ EM GPは、プログラミングにより制御された試料環境での浸漬凍結が可能です。試料粒径が100nmを超えるものや組織体には、高圧凍結法と呼ばれる高圧力下で試料を凍結する方法が用いられます。高圧凍結装置ライカEM HPM100は、試料に210MPaの加圧をしながら、凍結固定します。高圧下では氷晶形成が遅いため、氷晶形成が抑えられます。

このようにして凍結された試料を、電子顕微鏡で観察するためのワークフローとしてフリーズフラクチャ法、フリーズエッチング法、CEMOVIS(Cryo-TEM)法、Cryo-SEM法などについての解説が行われました。フリーズフラクチャ法とは、急速凍結した試料を真空中で割断することで、細胞膜が脂質二重層間などで割断された形になり,その凹凸面を観察する手法です。フリーズエッチング法とは、割断面または凍結切削による平滑面の氷を真空下で昇華させることにより、氷の下に存在している構造を露出させて観察します。

具体的な事例を紹介しながらの講義に参加者の皆様は真剣に聞き入り、講義後の質疑応答も大変レベルの高いものとなりました。

 

ワークショップ1: 高圧凍結、浸漬凍結

午後からは、高圧凍結装置 ライカ EM HPM100、自動浸漬凍結装置 ライカ EM GPの実機のデモンストレーションが行われました。

    • 高圧凍結装置 ライカ EM HPM100

高圧凍結装置 ライカ EM HPM100は、氷晶の発生を抑えて、試料を凍結可能です。懸濁液や単層細胞培養、細胞組織の凍結固定が可能です。

    • 自動浸漬凍結装置 ライカ EM GP

自動浸漬凍結装置 ライカ EM GPは、プログラミングにより制御された試料環境で再現性のあるプロセスを実現します。また、独自技術の液化ヘッドを使用して、二次冷媒を迅速・簡単・安全に注入することが可能です。

 

 

ワークショップ2: 電顕用試料プリパレーション

続いて、ライカ電顕用試料作製装置の実機を使って試料作製のデモンストレーションを体験していただきました。

    • クライオウルトラミクロトーム ライカ EM UC7FC7

ナノレベルでの超薄切片作製、および断面作製を可能にするウルトラミクロトームです。ライカ EM FC7を取り付けると、試料の凍結超薄切片および断面の作製が行えます。

    • 凍結割断ユニット搭載 高真空コーティング装置 ライカ EM ACE600FF

各種金属やカーボンを非常に薄く均等で粒状性の良いコーティング層に成膜できます。FE-SEMやTEMによる高分解能な解析に対応可能です。

 

トリプルイオンミリング ライカ EM TIC 3X

独自のトリプルイオンビーム方式により高品質な断面が得られ、しかも高速に広く深くミリングするため加工時間が短縮されます。

真空クライオトランスファー装置 ライカ EM VCT100

コンタミネーションフリーで、各種試料作製装置への試料のトランスファーを可能にします。クライオSEMの他、大気非暴露の解析装置用に前処理ソリューションを提供します。

各種装置のデモンストレーションと共に、クライオトランスファー装置EM VCT100を使ってのクライオクロスリンクのデモも行われました。これだけの装置群(クライオリンク)を一度に体験できるチャンスは貴重と、皆様非常に熱心に参加されました。

 

 

ワークショップ3: 電子顕微鏡による試料観察

最後は、西野有里先生による、作製した試料を実際にクライオSEMで観察するデモンストレーションが行われました。

化学固定や脱水、染色によるアーティファクトのない、生きていたときに非常に近い状態にある酵母をクライオSEMで観察。それぞれの装置を真空・凍結下で繋ぐ、クライオワークフローが完成することで、一つのソリューションが完結することが改めて確認されました。

 

 

 

大変盛りだくさんで多忙ではありましたが、最後にも大変活発な質疑応答が行われ、参加者の皆様の関心の高さが伺えたワークショップでした。定員10名の枠がすぐに満席になり、定員を超過させてもご参加いただけなかった方も多くいらっしゃいました。そこで、第2回目となる電顕用試料作製ワークショップ開催を、2015年8月に開催することを予定しています。

兵庫県立大学大学院生命理学研究科・教授 / 理化学研究所放射光科学総合研究センター・客員研究員宮澤 淳夫先生

早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。 (株)蛋白工学研究所・研究員、英国MRC分子生物学研究所・博士研究員、理化学研究所播磨研究所・チームリーダー、同・グループディレクターを経て、2009年より現職。

電顕用試料作製装置 凍結試料作製

ライカ EM VCT100 真空クライオ・トランスファーシステムは、各種の装置とのリンクが可能です。クライオSEMをはじめとする真空系、また、グローブボックスなども接続できるため、大気非暴露の解析装置用に、コンタミフリーの理想的な前処理ソリューションシステムを構築できます。