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一筋縄ではいかないクライオ電子顕微鏡観察。時には厳しくも的確なアドバイスが感動的な成果に繋がった!Case Studies

電顕用試料作製
お客様 高橋真一様
日産自動車株式会社総合研究所 先端材料研究所
業種 材料開発(電池材料)
用途 燃料電池向け触媒インクの観察
使用製品 自動浸漬凍結装置EM GP, 高圧凍結装置EM HPM100, 真空クライオトランスファーシステムEM VCT100, 凍結ウルトラミクロトームEM UC7/FC7T
高橋真一様(日産自動車株式会社総合研究所 先端材料研究所)

背景

燃料電池で使用される材料にはさまざまな種類があり、その構造解析には電子顕微鏡が必須です。私の場合は、電解質膜と触媒層の積層構造や触媒層内のカーボン粒子の凝集体を観察するためにSEM、白金やカーボンのナノ構造を見るときには、TEMを使っていました。

ですが研究が進むにつれて、燃料電池の電極を製造するために用いられる「触媒インク」そのものの構造を深く理解する必要が出てきました。しかし、インクは真っ黒い液体で簡単に観察することが出来ないし、粘度が高いので物性を測ることがそもそも難しい、という問題に行き当たりました。当然、液体のまま電顕に入れることも難しく、それまでの方法では上手く観察することが困難で、いろいろと試行錯誤しているなかで、クライオで観察を試してみたはどうかと行きつきました。

最初は、液体窒素を使ったメタルコンタクト法という凍結手法を試していました。ただインクの生の状態を外乱なく見られているのか判断できなかったため、相談をライカへ持ちかけました。

ソリューション

ライカに相談を持ちかけたのは、メタルコンタクト法を使って、自分なりに試行錯誤を初めてからしばらく経ったころでした。ある程度は氷晶の知識も持っていましたし、自分としては、それなりに見えているという自信があったのですが、実は全くそうでは無かった。

親身に相談に乗っていただき、クライオTEMで蛋白質の構造解析を研究されている兵庫県立大の宮澤先生とも一緒に実験できることにもなりました。ご紹介いただいたライカのクライオ試料作製装置を網羅的に使って、高圧凍結をした状態の良い凍結試料をクライオミクロトームで平らにしてクライオSEMで観察することに挑戦してみました。

試料のクオリティが観察を変えた

インクの物性を測る際は、粒径分布を測るなどしてだいたいの大きさを予想しますが、実際のインクを見ると、予想に反してPt/C粒子が、ゆるい凝集体を作っている様子が見えたんです。

実は、粒径分布測定では、装置の特性から濃いインクは希釈する必要があり、その際に凝集体が壊れていたのです。ただ、メタルコンタクトは破断面観察のため、本当に白金担持カーボンが凝集しているのか確信が持てていませんでした。これがクライオミクロトームによる平滑面の観察により、凝集体が本当に存在することが分かったんです。物性に基づく構造が、鮮やかに見えたときの感動と言ったら…。

そうしているうちに、アイオノマーの凝集形態がどうなっているかが気になりだして、次はTEMで観察してみようということになりました。クライオTEMでの実験も苦労は多かったのですが、宮澤先生のおかげもあり、なんとか観察できるところまで持っていくことができ、それが論文のテーマへと繋がっていきました。

宮澤先生のラボにあるヘリウム温度の電顕では、ダメージを可能な限り減らした状態での観察が実現し、アイオノマーが網目構造を作っているところを観察できました。あまりに予想外のものだったので感動を通り越して震えがきました。誰も見たことが無い像でしたから。

*1 Takahashi S. et al., Electrochimica Acta 224 (2017) 178–185, “Observation of ionomer in catalyst ink of polymer electrolyte fuel cell using cryogenic transmission electron microscopy”

*2 Junichi Shimanuki, Shinichi Takahashi, et al. Microscopy, 66, 204-208,(2017),” Microstructural observation of fuel cell catalyst inks by Cryo-SEM and Cryo-TEM”

ソフトマテリアルと生物系技術

工業材料系でウェットなソフトマテリアルをSEM観察する際は、溶媒を飛ばしてドライにしてしまうというのが従来のやり方でした。

燃料電池の電極層に使われる素材は非常にデリケートで、常温での前処理や、イオンミリング、FIBなど、材料系でよく使用される手法をそのまま適用してしまうと、構造が破壊されてしまいます。特にアイオノマーのような高分子の電解質は構造が弱いので壊れやすい。

それを、ウェットなまま、溶媒を含んだ状態で観察できるというのは、生物系の知見の恩恵だと感じています。クライオでは、生物系が先行していますから。

これからクライオ観察を始める方へ

確かに、クライオ電子顕微鏡観察は一筋縄でいかないケースも多く、苦労もあります。私が最初にライカに相談を持ちかけた時も、自分では「見えている」と思っていたものが、なんと過剰なエッチング等によるアーティファクトも含むものだったということが判明しました。ライカの専任スタッフの方に指摘されて初めて気がついたんです。

その後も困難はありましたが、知識を身につけ根気よく挑戦し続けることで、感動的な成果を得ることが出来ました。ライカのみなさまには、時には厳しくも的確なアドバイスをいただきつつ、これからも私たちの研究をサポートしていただきたいと思います。

クライオ電顕試料作製ソリューション

各プロセスごとにサブミクロン、ナノレベルの高い精度が求められる電子顕微鏡用試料作製プロセスには、シームレスなワークフローが必要不可欠です。ライカでは、ウルトラミクロトームのスタンダードや、生物試料へのダメージ・アーティファクトを著しく軽減できる高圧凍結装置をはじめ、ソフトマテリアルからハードマテリアルにいたるまで、TEM、SEM、AFM等の広範な試料作製ニーズにお応えする製品群を提供しています。

日産自動車株式会社総合研究所 先端材料研究所高橋 真一

1997年 千葉工業大学 大学院工学研究科修了 博士(工学)
1998年 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)フェロー
※勤務先:通商産業省 工業技術院 物質工学工業技術研究所(当時)
1999年- 日産自動車株式会社 総合研究所(現職)
2001年-2003年 Nissan Technical Center North America出向

 

関連論文

 

*1 Takahashi S. et al., Electrochimica Acta 224 (2017) 178–185, “Observation of ionomer in catalyst ink of polymer electrolyte fuel cell using cryogenic transmission electron microscopy”

 

*2 Junichi Shimanuki, Shinichi Takahashi, et al. Microscopy, 66, 204-208,(2017),” Microstructural observation of fuel cell catalyst inks by Cryo-SEM and Cryo-TEM”

クライオ電顕試料作製ソリューション自動浸漬凍結装置EM GP

各プロセスごとにサブミクロン、ナノレベルの高い精度が求められる電子顕微鏡用試料作製プロセスには、シームレスなワークフローが必要不可欠です。ライカでは、ウルトラミクロトームのスタンダードや、生物試料へのダメージ・アーティファクトを著しく軽減できる高圧凍結装置をはじめ、ソフトマテリアルからハードマテリアルにいたるまで、TEM、SEM、AFM等の広範な試料作製ニーズにお応えする製品群を提供しています。