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インダストリー 2017.08.30

実体顕微鏡観察事例/微細加工の駆け込み寺―難問に挑戦し続けるものづくりのプロ

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Leica M205 C のカタログはこちら

 

自分たちにしか作れないものがある

機械や製品はいくつものパーツから成り立っています。その中には、各メーカーが持つ既存の工作機械では製作することのできない微細な部品もあります。それらを自社開発の工具や、自動機械で加工し、製作する株式会社インパクト。 その社名は、どの業種にいっても、世界のどの場所に行っても通用するようにと名付けられました。実際に多くの業種からオファーがあり、その中には、難問・珍問も多数あるとのこと。微細加工に課題を抱える顧客企業にとって、インパクトは、全国回り回って、やっと見つけた最後の駆け込み寺のような存在になっています。 難しい依頼に対しても、100%の確信がなくても可能性を見いだせれば、まずは受注します。そして、挑戦しているうちに解決策が見えてくるという平船淳社長。微細加工を極められた平船社長にお話しを伺いました。

 

インパクトだからできること

実は当社には、私たちにしかできないもがたくさんあります。これらは、「こういうものが欲しい」と思った企業が、さんざん開発できるところを探して、断られた末当社にたどり着くというケースが多いのです。つまり、当社以外に発注できる先がないお客様が多いと言うことです。新しい依頼を受ける際は、私が直接お話しをするのですが、毎回勝算があってお受けするわけではありません。大体8割くらい自分のなかで「いけるな」と思えば受注します。 むしろ、依頼してらしたお客様のほうが、「本当にできるのかな」と不安を持たれていているケースもあり、結果をお見せすると、「いやー、本当できましたね!」と驚かれながらも喜ばれるということが多いです。あるお客様は、10社以上回って、全てに出来ないと言われてしまい、計画が頓挫しかけていました。そして、ようやく当社にたどり着き、二つ返事で「できますよ」となりました。しかも、実際に作ってお見せすると、「これはすごい」ということで、全て契約が決まり、補助金まで通りました。

 

可能な限りの機械化がポイント

新しい案件を受注して、加工する段階になったときは、まず僕が最初に試作をします。そして、他のメンバーでも再現できるようにしてから、量産のために人に渡すようにしています。当社は、エンジニア2名、パートさんに日替わりで2、3名来てもらっている、小規模な会社です。この規模で微細加工の量産効率を上げるために、可能な限りの機械化を進めています。もちろん、初めは手で作業をします。しかし、いつまでも手だけに頼っているのではなく、きちんとその工程を機械化し、量産できるレベルまで落とし込むことが、加工技術と観察技術において特に微細な場合は大事です。これは、知識と良い天体望遠鏡がなければ成立しない、天文学と似ています。微細加工の場合は、良い機械と観察機器、この二つがなければだめです。 微細加工は、実際のオーダーで言うと1から100ミクロンの間くらいの幅の作業が必要になります。細いものだと、大体丸棒で1ミクロン、穴でも1ミクロンなど、緻密な作業が行われるので、顕微鏡は必須です。

しかし、実体顕微鏡で見える、40倍・80倍のレベルだと私達の仕事には支障があります。今、当社で使っているのは、ライカのM205 Cで160倍までシームレスにできます。これが、微細加工にはものすごく大事なのです。今までは、100倍を超えたときは、金属顕微鏡に移して作業をしていました。そうすると、逆像なので非常に見づらく苦労をしてきました。ところが、実体顕微鏡だと全部正立像で、そのまま160倍までシームレスでズーミングできるのです。これを使うようになってから、作業性がすごく良くなりました。当社は顕微鏡で観察しながら、顕微鏡の下で加工までしてしまいます。そのため、加工するエリアがきちんと取れることや、頻繁にズームイングするので、その操作が容易なこと、もう1つは、観察しながらモニター越しに見えること。顕微鏡にこの3つの条件が整っていないと、うまい加工ができません。そして、この条件を意識しながら選んでいた結果、ライカさんの商品にたどり着きました。私たちのような、職人的な人間にとって、一生懸命世界の実体顕微鏡を比較検討した結果ライカさんしかなかったんです。なぜかというと、他のメーカーさんの商品は観察するのにはいいのですが、「観察しかできない」のです。もちろん、実体顕微鏡は観察機なので、これは当たり前のことなのですが、実体顕微鏡を見ながらの加工に適した顕微鏡が、実はなかなかありません。ズーム比が取れて加工もしやすいという観点で探すと、ライカ一択になりました。今は、ライカの実体顕微鏡M205 Cを5台使用しており、加工用に半分、あとの2台、3台を主に検査用に使用しています。 当社がこのように顕微鏡にこだわるのは、職人の腕を活かすためは、良い観察機材が必要だからです。また、先ほどと同じ天文で例えると、良い顕微鏡を使っているかどうかは、天体望遠鏡を使っているのか、双眼鏡を使っているのかくらいの差があります。当社の場合は、たまたま天体顕微鏡に匹敵する、良い実体顕微鏡を見つけために一気に色々なことが見えてきました。もし、20倍しか見えない実体顕微鏡で、こんな微細を作れと言われても、なかなか難しいものがあります。今でこそ、こんなことをはっきりと言うことができますが、導入前は悩みました。かなりの高級機材なので、本当にこんな高いもの買っていいのかな・・という思いがよぎり、購入を躊躇していたのですが、1台買ってみたらあまりに使い勝手がよく、その1台をみんなで奪い合うような状況でした。やはり、1度良い顕微鏡を扱ってみると、グレードの低いものには戻れないんですよね。従業員からももっと台数が欲しいという要求があり、その後追加で購入し、今では1人1台活用しています。

 

加工用のライカ M205 C

当社にいらして、初めてこのライカ顕微鏡M205 Cをご覧になった方は、ファンキーな見た目にびっくりされます―これは、主にこの下でいろんな治具をセットして加工するための顕微鏡で使っています。XYテーブルはモーターで動きますし、ハーフミラーでシームレスにモニターに映せるので、リアルタイムで画像認識をするなど、多目的に使っています。これを使用しての作業は、丸棒だったら5ミクロン、10ミクロンはきちんと精度がでます。先に分かっているものを隣に置き、それと比較しながら作業を進めます。10ミクロンで10パーセント狂ってしまうと、11ミクロンになってしまいます。10パーンセントというのはとても大きな誤差なので、こうして並べて作業をすれば、大体は数パーセント以内に悪くても収まります。これによって、10ミクロン、5ミクロンの指定があってもほぼその通りできるのです。また、加工しているときは低倍でないと作業がしにくいので、一旦低倍に落とすのですが、正しく加工が出来ているか確認するために、100倍~160倍まで上げて、チェックします。そして、もし加工がうまくいっていなければ元に戻し、修正を行う必要があります。こういった一連の動きが、リアルタイムで手早く手軽に出来るところが、このズーム比20.5倍のいいところです。一言に「加工」と言っても、色々なレベルの加工があります。当社では、場合によってはパート従業員に加工をやってもらうこともありますし、私しかできないような工程は私が担当するなど、分業しています。作業には、様々な機器を使っていて、超音波だったり、40万回転のエアタービンだったり、顕微鏡の周りにはフットスイッチがたくさんあります。 私達の加工は、基本的に顕微鏡を見ながらの作業になるので、加工の最中は移動ができません。作業にはスピードも重要です。なので、このように環境を整えて、長時間の繊細な作業を行っていきます。こういう細かい作業を集中してやっていると、段々目が疲れてきて、集中力が落ちてくるのですが、この顕微鏡は良い顕微鏡だから目が疲れないんです。購入の際は特に強く意識していなかったのですが、私達のような繊細な作業を行う職人にとっては、この「目が疲れない」というのも大きなポイントです。

 

職場環境のこだわりと技術の継承

当社のモットーは「仕事は楽しくストレスなく」です。社内にはいつも笑い声が絶えず、とても和やかな雰囲気です。従業員が皆、笑いながら検査しているような環境です。だから、社内のコミュニケーションはとても円滑です。例えなにか上手くいかないことがあっても、出来なかった人に「お前、何やっているんだ」とプレッシャーをかけることはありません。もし出来ないことがあったら、なぜそれができないか原因を分析して、それを防ぐ方法をみんなで考えようと、毎日のように改善を重ねています。 当社では、技術に関することは全てオープンにしています。例えば、ITを活用して作業工程を動画で撮っておくこともありますし、部品などにはQRコードつけています。このQRコードにスマホをかざすと、工程のレシピが出てくる仕組みを作っています。自分でやった場合に、1時間かかる内容をわかりやすく凝縮して5分の動画レシピにまとめるわけです。これは、料理の伝承とまったく同じで、いちいち口で説明をせずとも、ノウハウをぎゅっと濃縮して動画だけでわかりやすく紹介する方法です。 また、当社で動いている自動機械は、全部スマホから制御できます。画像認識と音声認識、それを全部駆使して、世界のどこにいようが、いつでもこの機械を動かせる仕組みを作りました。つまり、簡単な機械であれば、そのオペレーションは世界の誰でもできるのです。例えば、日本の夜中はブラジルは昼間なので、ブラジルにいる誰か手が空いている人が、インターネット越しに当社のオペレーションをすることも可能なのです。このような、IoT(Internet of Things)の原型的な仕組みの制御や回路、設計ができています。当社は小さい企業ですが、引き出しが多いのが特徴です。たまたま従業員には、IT企業の出身者がいるので、画像解析処理も全部アルゴリズムから考えて作っており、モーター制御も制御基板まで自社で作り超高速制御をするなど、色々なことをやっています。これからも、どんどんこういった新しい挑戦をしていき、技術力の向上に努めるとともに、先に述べた見える化を進めることによって、技術の継承につなげていきたいと思っています。

 

今後チャレンジしたい分野

これから特に力を入れていきたいのは、特に医療関係です。私には医療関係の最先端にチャレンジしてみたいという夢があります。例えば、血管の中を走らせて、脳まで届いて、脳の中を手術するツールなどを開発したいですね。そして、血管を切るとか、腫瘍を掴むとか、そういった観察と加工を1つのファイバーの中で一度に出来るようなツールが出来たら良いと思います。こういったツールを作るのには、やはり良い顕微鏡が必要です。この挑戦にはライカさんと二人三脚で取り組まないといけませんね。

 

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実体顕微鏡
Leica M205 C

ライカ M205 Cは、長年の物理的障壁をクリアし、高解像と深い焦点深度を両立させる『FusionOptics™ 』搭載の全く新しい実体顕微鏡です。20.5X ズームで、1×対物レンズを使用して7.8倍〜160倍、2×対物レンズでは最大320倍までの観察が可能に。高倍率域においても、実体顕微鏡ならではの立体感あふれるイメージを実現します。広い作業スペースや堅牢性の高いシステムなど、安心・快適な作業環境を提供します。

Leica M205 C
株式会社インパクト 代表取締役
平船 淳社長

平成20年 『大田の工匠100人』、平成26年 『東京マイスター』を受賞。NHK「凄ワザ!」、TBS「がっちりマンデー」など数多くのメディアにも出演。

株式会社インパクト 平船 淳社長

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