◇演題①概要◇
核酸医薬品は、その分子量および電荷等の化合物特性により、細胞膜を容易に通過することはできません。その細胞内取り込みはエンドサイトーシスに依存するため、細胞質または核内で薬効を発現するためには、エンドソームまたはリソソームから離脱する必要があります。しかし、エンドソーム・リソソーム離脱の割合は非常に低く、細胞内に取り込まれた核酸医薬品の大部分は薬効発現に寄与できません。細胞取り込み量やエンドソーム・リソソーム離脱効率は、配列やバックボーン・糖部修飾、DDS (drug delivery system)等により顕著に変動するため、組織ホモジネート中薬物総濃度基準の薬物動態学(PK)および薬力学(PD)的パラメータの相関(PK/PD相関)は、しばしば被験物質ごとに乖離します。真のPK/PD相関を評価するためには、細胞内の標的部位に存在する核酸医薬品を定量することが重要です。しかし、細胞内分布を定量的に評価する方法は未だ確立されておらず、薬物の微小空間における位置情報を含んだ薬物動態評価法の確立が強く望まれている状況です。そこで、武田薬品工業様では、微小空間における薬物動態解析(microenvironmental pharmacokinetic analysis, μPK analysis)の評価基盤構築を目的として、細胞レベルあるいはオルガネラレベルで薬物の存在量を評価できる方法について検討を行っています。今回は、その中でも最先端の共焦点顕微鏡を用いたイメージングによるμPK analysisの実例についてご紹介いただきます。
◇演題②概要◇
近年、核酸医薬をはじめとするnew Modalityの作用機序は、従来の低分子医薬品と比べて複雑化し、そのドラックデリバリーシステム(DDS)も高精度のデザインが要求されています。それに伴い創薬コンセプト証明においても、細胞内オルガネラ膜内外を見分けるレベルでのイメージングによるDDS評価が求められています。しかし、既存のイメージング技術では、解像度・膜輸送経路の観察手法・細胞内DDSの定量化という点において、不十分であるという課題があります。この解決手段として、ライカより、超解像度共焦点顕微鏡STELLARISの細胞内DDSの観察事例と、最新AI解析技術AIVIAをご紹介します。