- 概要
単粒子解析が可能なクライオTEMのサイトが続々と立ち上がり、クライオTEM以外にも各種クライオ顕微鏡システムが国内での導入が進んでいます。これにより、高難度のクライオTEMトモグラフィによる細胞内の構造解析への挑戦が現実味を帯びた技術になってきました。その試料作製の中心となってくるのが「生物系クライオFIB-SEM」になります。今回は、新たに本格的な活動を始められている皆さんを中心に、最新の研究活動、または、施設紹介、装置メーカーの皆様からは、本領域に活用できる最新装置や手法の紹介をいただき、皆さんの意見交換・技術交流の場として活用していただきたいと思います。
また、分科会では、on-line、ハイブリッド対面式と、withコロナ、afterコロナを見据えて各種方式を取り入れて参りました。
今年度は、5月にCOVID-19の5類変更に伴い、学術講演会はじめ活発な討論・交流が再開できる年となりました。
今回は、群馬でのオンサイトでの講演会となります、ぜひ、奮ってご参加ください。
- 対象
クライオTEM、クライオFIB-SEM、クライオ光顕、また、急速凍結などの凍結装置を使っている人、これらの手法に興味がある人。
- 開催場所
顕微鏡学会シンポジウム
シンポジウム – 公益社団法人 日本顕微鏡学会 | The Japanese Society of Microscopy
(本ページ公開は、8月以降予定)
Gメッセ群馬
- 開催日程
2023/11/11(土) 9:00~17:30
2023/11/12(日) 9:00~17:30
- 開催形式
対面式
- プログラム
10:00-10:20 「北大薬学部におけるクライオ電子顕微鏡施設の紹介」
喜多 俊介 北海道大学薬学研究院 生体分子機能学研究室
北海道薬学部では2019年のクライオ電子顕微鏡Glacios導入を皮切りに、クライオTEM、クライオFBI、
クライオCLEMなどを導入して構造生物学研究の環境を充実させてきた。研究内容も単粒子解析に始まり、
トモグラフィーを行い細胞内部の観察を行うin situ構造生物学へと拡張しつつある。
本発表では、北大薬学部の機器と現在取り組みつつある研究について、簡単に紹介したい。10:20-10:40 「蛍光ビーズの“位置合わせ“によるCryo-CLEM観察の精度と応用の可能性」
中深迫 美穂 九州工業大学 情報工学府
Cryo-EMは,タンパク質の構造解析のみならず,細胞・組織の構造の代表的な手法の1つとなりつつあるが,
全ての構造体が観察されるために,ターゲットとなる構造を見いだすことなどが困難である.そこで,
TEM, SEM, FIB(SIM),蛍光顕微鏡法などを組み合わせて用いる「相関顕微鏡法」が有効である.
相関顕微鏡法の最も重要な工程は,異なる情報をもつ各顕微鏡視野の位置合わせである.ここには主に2つの
工程があり,撮影の際にほぼ同一視野を撮影すること,撮影後の画像を正確に重ね合わせることである.
今回,複数のサイズ・蛍光色の蛍光ビーズを用いたCryo-CLEMへの適用方法,それにより保証される観察結果
の精度,及び他の顕微法への応用の可能性に関して報告する.9:35-10:05 「自然科学研究機構におけるCryo-FIB-SEMの活用実例」
島田 雄斗 自然科学研究機構生命創成探究センター
Cryo-FIB-SEM (Aqulios 2)では、より自然に近い状態の生体構造をクライオ電子顕微鏡で観察するための
凍結超薄切片(ラメラ)を作成することができる。また、集束イオンビーム(FIB)によって凍結試料を連続的に
スライスし、複数枚の断層画像の撮影からより自然に近い状態の生体試料を3次元的に可視化することもできる。
さらにこれらを専用の蛍光顕微鏡ユニット(iFLM)を用いた光顕電顕相関観察(CLEM)により行える。
このようにして、細胞小器官の構造や空間的な位置関係をより効率的かつ正確に明らかにすることができる。
今回、このCryo-FIB-SEM (Aqulios 2)の特徴や性能を説明すると共に、自然科学研究機構における活用事例に
ついて紹介する。11:00-11:10 休憩
11:10-11:30 「阪大生命機能研究科での in situ 構造解析への取り組み - クライオ FIB-SEMからクライオTEMへ」
宮田知子 大阪大学大学院 生命機能研究科
クライオ電子顕微鏡トモグラフィー法は組織や細胞、タンパク質の構造を生理的条件に近い状態で
観察できる方法である。特に細胞内で機能するタンパク質のin situ構造解析を進めるために大阪大学
生命機能研究科では日本電子製 Cryo-FIB-SEM(JIB-4700Fx)を導入し、凍結細胞断面(ラメラ)
作成のためのワークフローの構築を進めた。作成したラメラはそのまま日本電子製CRYO ARM 300IIに
導入可能で、ハイスループットなトモグラフフィーデータの収集が可能となった。
今回は試料作成からデータ収集までのワークフローをこれまで収集したデータを例に挙げながら紹介する。11:30-11:50 「クライオ電子線トモグラフィーによる葉状仮足形成過程の観察」
稲葉 弘哲 三重大学 大学院医学系研究科 組織学・細胞生物学分野
葉状仮足は細胞運動時にみられる枝分かれしたアクチン線維に富んだ扁平なシート状の細胞突起であり、
その複雑なアクチンネットワークの解析には電子顕微鏡の解像度が必要である。この非常に薄い構造は、
収束イオンビームによる掘削の必要がないためin situクライオ電子線トモグラフィーの理想的な対象である。
我々は培養細胞に光遺伝学ツールとアクチンマーカーを遺伝子導入し、浸漬凍結装置内で青色光の照射に
より葉状仮足形成を誘導し、急速凍結試料を作製した。この試料をクライオ光学顕微鏡で観察し、形成
された葉状仮足を同定した上で、クライオ電子線トモグラフィーによる三次元解析を行なっている。
これまでに取得したデータを示すとともに、ユーザー視点からの課題点や将来展望について議論したい。
- 参加費
- 主催
-
セッション企画 生体解析分科会
- 申込方法
顕微鏡学会シンポジウム 本サイトより参加申し込みを行ってください。