■概要■
細胞の大きさは、それぞれの細胞が特定の機能を発現したり、組織や器官の構成単位として多細胞体の成長を規定する上で、適切に制御される必要があります。メリステムのように増殖を続ける細胞集団では、細胞分裂の頻度と細胞サイズの拡大速度のバランスが細胞サイズを決定します。このため、細胞サイズの適切な維持には、細胞サイズに依存した細胞周期制御の仕組みが存在すると考えられており、その仕組みを説明するモデルが考案されてきました。
伊藤 正樹 先生のご研究から、シロイヌナズナのGRAS型転写因子SCL28が、細胞サイズに依存して細胞周期を抑制することにより、細胞サイズの決定に関与する可能性が示されています。さらに、SCL28は転写因子でありながら、核だけでなくプラスチドにも局在するという特徴的な性質を持ち、この細胞内局在を基にした細胞サイズ制御の独自のモデルを提案しています。
本セミナーでは伊藤 正樹 先生より、蛍光寿命イメージングを活用したタンパク質の細胞内局在観察の有効性を踏まえ、これまでの研究成果を基に描いた細胞サイズ制御に関する仮説の全体像についてご紹介いただきます。