- Cryo技術を用いたタンパク質のin situ構造解析
髙﨑 寛子 (大阪大学 蛋白質研究所)
大阪大学・蛋白質研究所は、Cryo-LM、Cryo-FIB-SEM、Cryo-TEMの装置、全てが揃っている、日本国内でも数少ない施設の1つである。これら装置が可能とするのが、細胞内で機能するタンパク質のin situ構造解析である。これにより、精製したタンパク質を用いる単粒子解析法では実現できない、細胞内にのみ存在する超巨大タンパク質複合体などの構造解析が期待される。蛋白質研究所では、2020年度からCryo-LM、Cryo-FIB-SEM装置の立ち上げを行い、現在、本格稼働状態となっている。これら装置を使用して取得したデータを例に挙げながら、蛋白質研究所でのin situ構造解析の現状を報告する。
- 放射光出身者による初めてのクライオ電顕導入
原田 彩佳 (筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 構造ダイナミクス)
クライオ電子顕微鏡による単粒子解析がタンパク質の原子モデルを得る方法として一般化したことにともない、現在、国内において最新鋭の電子顕微鏡装置の導入が進められている。筑波大学生存ダイナミクス研究センターにおいてもCRYO ARMTM 200および CRYO ARM TM 300 IIをAMEDのBINDS事業の一環として2021年9月に導入した。放射光施設としてのKEKとの連携はもちろんのこと、中性子回折測定の可能なJ-PARC、そして製薬企業の研究所の集まるこの地にて化学を基盤とした創薬への貢献を目指している。今回は、これまで放射光X線を用いて結晶構造解析を行なってきた私が、初めて電顕に触れ、同時に施設立ち上げ業務に携わってきた経験の一端を紹介する。
- 培養細胞の微小環境をデザインするAlvéole社PRIMOバイオエンジニアリング技術
水流 功春 (プライムテック株式会社)
Alvéole社PRIMOシステムは倒立顕微鏡の対物レンズを通して、培養基板上に任意のパターンのUV光をマイクロメートル単位で投影することができる光学システムである。生体分子のマイクロパターニング、UVセンシティブレジストのフォトリソグラフィー、ハイドロゲルの精密な光重合など、さまざまな目的に使用することができる。特に透過型電子顕微鏡法、クライオ電子線トモグラフィーによる細胞構造のイメージングを目的に、Cryo-EMグリッドメッシュ上へ効率的に細胞を配置するためのマイクロパターニングも可能である。本講演ではPRIMOバイオエンジニアリング技術の詳細とその応用事例について紹介する。
- 蛍光ビーズを利用したCLEMによる同一試料観察 ~ cryo-CLEMでの活用をめざして~
五味渕 由貴 (九州工業大学大学院 情報工学研究院 物理情報工学研究系)
光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた観察が行われているが、光学顕微鏡と電子顕微鏡では、視野の大きさや見え方が異なり、同一試料、同一視野の観察が難しい。光-電子相関顕微鏡法(CLEM: Correlative Light and Electron Microscopy)を利用することで、光学顕微鏡と電子顕微鏡の両方で同一試料・視野の構造や現象の観察が実現している。本研究では、使用するマーカーの種類、濃度、座標登録数によって、SerialEMや自作ソフトによる座標計算と、ステージ移動後の視野の中心と目標物の距離(誤差)が小さくなる位置合わせプロトコルを検討している。また、クライオ条件下で同様のプロトコルが適用できるか検証を行なっている。当会では、それらの現状について紹介する。
- クライオ電子顕微鏡を用いた In Situ 観察の生物学、医学への応用 ~実際の実験するとき気をつけていること~
今崎 剛 (神戸大学 医学部)
クライオ電子顕微鏡トモグラフィー法は、細胞、組織、そして蛋白質のような生体試料の構造を、生理的条件に近い状態で観察出来る非常に強力な手法の一つである。近年、検出器の高性能化や解析手法の向上により、電子線が透過する薄い試料に関しては、微小管やアクチン、リボソーム等細胞内の分子の構造が識別出来る分解能で解析が可能となってきた。しかし実際にどのようにサンプル (細胞) を調整しデータ測定まで行うか、まだまだTIPSは乏しい。本発表では、我々が現場でどのような事に気をつけながら実験を行っているか、いくつか実例を挙げながら紹介する。
- クライオFIB技術の紹介
松島英輝、水野議覚、山田晶子、三平智宏 (日本電子株式会社)
FIB-SEMは加工用のフォーカスイオンビーム(以下FIB)と観察用の電子ビームを備えた加工観察装置で、空間分解能の高いFIBによりnm精度での精密な加工ができることが最大の特徴である。半導体業界を中心にTEM用試料作製で広く用いられているFIB-SEMだが,最近ではクライオステージを取り付けることにより、凍結させた生物試料の加工、観察も可能となってきた。しかし、冷却することにより発生するアイスコンタミネーション(試料表面に装置内の残留水分等がアーティファクトとして付着する現象) は潜在的な問題であり、凍結試料の安定した加工観察にはこの問題への対策が重要となる。本講演では、アイスコンタミネーション対策と酵母菌を用いたクライオ技法の応用例を紹介する。
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https://xlab.leica-microsystems.com/workshop/biomolecules-minisympo-1