宇宙、惑星から細胞まで―圦本尚義が語る、同位体顕微鏡とイメージングの可能性

ものづくりと顕微鏡

宇宙、惑星から細胞まで―圦本尚義が語る、同位体顕微鏡とイメージングの可能性

まるで人を検査するように同位体マーカーを観察

圦本尚義―世界で初めて小惑星のサンプルを回収した後、無事に地球帰還を果たした小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトメンバー。北海道大学教授で、宇宙科学の第一人者。ライカの高圧凍結装置と、ウルトラミクロトーム、また凍結置換装置を導入し、世界で唯一の同位体顕微鏡でイメージングを行なっている圦本先生に、他では出来ないユニークなご研究内容についてお話を伺いました。

同位体顕微鏡って何ですか?

同位体顕微鏡は、名前の通り、同位体*1の分析を行なうための顕微鏡です。高性能な光学顕微鏡くらいの分解能があって、固体の組織を見ることができます。同位体に変化が起こるような実験を行なうことで、どのような組織が新しく置き換わったのか、ということを観察できるところが特徴です。これまで見ることができなかったことも見えてきます。

(*1) 同じ原子番号を持つ元素でありながら、その質量が違う原子核が存在する場合、それを互いに同位体である、という。原子核に存在する中性子の数が異なる際に、質量の違いが起こる。

北海道大学創成研究機構 Isotope Imaging Laboratory

小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星微粒子の分析に使用されたことが非常に印象に残っています。

そうですね。私たちは、惑星とか宇宙という、天然のものを観察の対象にしています。天然では、さまざまな現象によって、少しずつ同位体が変化しているということが昔から調べられているんですけど、それが、どんな時にどんな場所で変わっているのか、ということをイメージングしています。

同位体顕微鏡を使ってイメージングするというのは、とてもユニークなことですよね?

世界でも、うまくイメージングできているのは、北海道大学くらいだと思います。

今後、同位体顕微鏡を使ったイメージングがどのように広がってほしいと期待されていますか?

今は、石のような硬いものから、細胞のような柔らかいものまで見られるようにしようと、頑張っています。同位体顕微鏡で生物試料の「ものの位置」を見るというのは、世界的にも珍しい研究手法と言われていて、まだ上手く普及できてはいません。

同位体顕微鏡では、試料の表面にある同位体元素の分布を見ますので、観察用に試料を調整する過程で、成分が流れ、失われてしまうような試料は観察が出来ないんですね。小腸の粘液などがそれに当てはまります。従来の電子顕微鏡と同じような試料調製では、成分が流れてしまうわけですが、ライカの高圧凍結装置で凍結した後、凍結置換装置でゆっくり水分を抜いて調節してみたところ、成分を上手く保存した状態で試料をつくることが出来たんです。

なので、まだ「どこでも出来る」と言えるほど確立出来てはいませんが、同位体顕微鏡を使った生体試料の観察が、もっと普及すると良いですね。

どんな元素を観察しているんですか?

細胞とか組織をつくっているふつうの元素ですね。C(炭素)とか、H(水素)とか、N(窒素)とか。一般的には、分子の形で見て、タンパク質や乳酸がどこにあるか、といったことを観察するんですけど、その中にある、例えばアミノ酸の窒素同位体なんかを「ドープ」して、マーカーを組み込ませてやると、アミノ酸の代謝を見ることが出来たりする。

この方法でラベリングすると、蛍光や抗体を使用してラベリングした時に起こるような、分子の種類が変わってしまう、といった妨害が無いんです。例えば、ターゲットがマウスならば、食べ物や飲み物に混ぜて与えてやるだけで、マーカーの位置を特定することが可能になります。まるで人の検査をするのと同じような感覚です。日常が見える、と言った感じでしょうか。同位体顕微鏡ならではのユニークなポイントだと思います。

高圧凍結装置
Leica EM ICE

ライカEM ICEは、電気刺激モードが搭載可能な唯一の高圧凍結システム。1nmスケールの構造的な分解能とミリ秒単位の時間分解能を実現した、高圧凍結を施す準備が整いました。刺激的でわくわくするソリューションです。

高圧凍結装置 Leica EM ICE

北海道大学 理学研究院 自然史科学 教授
圦本 尚義先生

北海道大学(教授)
北海道大学 理学研究院 自然史科学 教授・JAXA 地球外物質研究グループ長
1980 年筑波大学第一学群自然学類卒。1985 年同大学院博士課程修了。理学博士。筑波大学地球科学系助手・講師、東京工業大学理学部助教授を経て、2005 年より現職。2016 年クロスアポイントメント制度で JAXA 地球外物質研究グループ長を兼ねる。

北海道大学 圦本 尚義先生
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