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マルチプレックスイメージングによる繊維芽細胞の表現型の同定
ライフサイエンス 2023.04.06

マルチプレックスイメージングによる繊維芽細胞の表現型の同定

はじめに

 この記事では、マルチプレックスイメージングとシングルセルRNAシーケンスにより線維芽細胞の表現型を同定し、炎症性疾患の細胞メカニズムの可能性を探りました。
 線維芽細胞の表現型を特定することで、疾患と炎症メカニズムの明確な関係を理解することができます。線維芽細胞は、体内において様々な免疫や修復の役割を担っています。この役割が乱れると、関節リウマチや潰瘍性大腸炎、間質性肺疾患、シェーグレン症候群など様々な炎症性疾患を引き起こします。ところが、線維芽細胞のサブタイプはまちまちのため、この細胞が炎症性疾患のメカニズムにどのように関与していたのか、理解をすることはとても複雑なことだったのです。

 

方法

本記事では、下記2つの手法を使用しました。
・シングルセルRNAシーケンス
・マルチプレックスイメージング

 

結果

疾患の表現型に共通する線維芽細胞の機能的クラスターを2つ同定し、それらが疾患を促進させる可能性があることを明らかにしました。

1)上述の疾患に罹患している患者さんから採取したCD45-EPCAM-間質細胞でシングルセルRNAシーケンス(ScRNA-seq)を実施し、様々なクラスタリングの手法を用いて線維芽細胞から14個の異なる表現型クラスターを定義しました。

2)フローサイトメトリーとScRNA-Seqを組み合わせた解析により、炎症(免疫細胞の浸潤によって判断)に最も関連するクラスターを同定しました。

これらの結果を踏まえ、ここでは2つの表現型クラスターに注目することにしたところ、それぞれ異なる遺伝子クラスターと転写因子活性を持っているということが分かりました。
・SPARC+COL3A1+線維芽細胞(C4細胞と表記);組織のリモデリングプログラムとの関連性が高い。
・CXCL10+CCL19+線維芽細胞 (C11細胞と表記);様々な免疫細胞のリクルートと相互作用の機能に関連している。

3)次にこれらのクラスターを空間的に把握するため、マルチプレックスイメージングシステムである「Cell DIVE(Leica)」を使用することにより、炎症を起こした滑膜、唇、腸の組織内の観察に成功しました。
そして血管、リンパ球、壁膜という3つの主要な空間領域を分析したところ、CellDIVEと空間的クラスタリング解析により、C4線維芽細胞は壁膜領域と収縮繊維細胞に局在し、C11線維芽細胞はTリンパ球が集積した領域に存在することがわかりました。
この空間情報は、シークエンスベースの解析に相関するものと言えます。

図1:Cell DIVEで撮像。8つのバイオマーカー: CD20、CD4、CD31、SOX9、Vimentin、Ki67、Panck、SMA。

 

結論

 本記事のデータは、複数の異なる疾患が線維芽細胞の表現型に共通点があり、炎症の根本的なメカニズムにも共通する部分がある可能性がある事を示唆します。また今回の結果は、様々なクラスの線維芽細胞が炎症時に別々の機能を発揮する可能性も示しています。ここでは、RNAシーケンスとマルチプレックスイメージングを併用することで、複雑な細胞タイプの表現型クラスターを理解し、その発現とシグナル伝達環境を理解し、組織内の空間特性を描いています。

 

参考文献

1)A. P. Croft, J. Campos, K. Jansen, J. D. Turner, J. Marshall, M. Attar, L. Savary, C. Wehmeyer, A. J. Naylor, S. Kemble, J. Begum, K. Dürholz, H. Perlman, F. Barone, H. M. McGettrick, D. T. Fearon, K. Wei, S. Raychaudhuri, I. Korsunsky, M. B. Brenner, M. Coles, S. N. Sansom, A. Filer & C. D. Buckley:Distinct fibroblast subsets drive inflammation and damage in arthritis.
Naturevolume 570, pages 246–251 (2019)

論文全文はこちら

 

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超マルチプレックスイメージングは、有用なバイオマーカーを明確に視覚化、識別および定量化する最新の技術です。たった一枚の組織切片から、プローブ染色、イメージングおよび脱色の繰り返しを行い、1細胞レベルで何千もの空間情報を収集します。従来の手法では、1つの標本からバイオマーカーの検出が6~8種類程度に限られていたのに比べて、Cell DIVEでは60種類ものバイオマーカーの検出が可能です。

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