• Facebook
  • Twitter
  • Share
  • Share
インダストリー 2023.09.05

ナノレベルで金型の磨きを極める~モノづくりの現場を支えるライカの実体顕微鏡

橋本工業様代表取締役 橋本裕之様(右)と営業技術の喜多隼也様(左)。

実機を用いた顕微鏡ワークショップの開催案内をメールマガジンでお届けしています!

ライカIvesta 3(アイヴェスタ スリー)のカタログはこちら

 

製品を量産するために欠かせない金型。その金型を傷がつかないように極限まで磨いて鏡面にしているのが、今回ご紹介する株式会社橋本工業様です。ライカのS9 D グリノー実体顕微鏡を導入し、精密さが要求される金型磨きにどのように活用しているのでしょうか。最高レベルの磨きを目指す代表取締役 橋本裕之様、営業技術の喜多隼也様にお話を伺いました。

 

究極の磨きは道具選びから

そもそも橋本社長はどのような経緯で金型磨きの業界に入られたのですか。

橋本:もともとはアパレル業界にいました。ちょうど30年ほど前、縫製市場が海外に移った関係で業界全体が打撃を受けて、先行きが見えない状況になりました。それならいっそ好きな自動車や機械の仕事に就こうと、自動車のパーツを作る会社に営業として入ったのがきっかけです。

営業は順調でした。会社で受けられないほど仕事を取ってきてしまい、工場の仕事を手伝うようになりました。自分で加工した機械や金型をお客様のところへ納品すると褒められるものですから、この能力を生かさない手はないと思い、1年半後に独立しました。若気の至りですね。

 

独立後のお仕事はスムーズでしたか。

橋本:この業界の仕事がまだ確立していなかったので、自由に仕事ができました。石の上にも3年で、その間は友だちの誘いも全部断って無休で働きました。その甲斐あって、リーマンショックまでは業績が右肩上がりでした。利益が出た分は、顕微鏡をはじめ、砥石やダイヤモンドペーストなど、すべて一流の道具を揃えることにお金を使いました。

 

一流の道具にこだわったのはなぜですか。

橋本:仕上がりがまったく変わるからです。「橋本さんのところはなぜこんなにきれいなの?」と聞かれますが、オーダーメイドで研磨剤を作り、きちんと調合しているからなんです。道具にお金をかけているので加工料金は高くなりますが、鏡面磨きの品質は断然良くなりますし、他のメーカーとの差別化も図れています。

レクサスのエンブレムなど、橋本工業様で研磨された金型を使って完成した製品。

お客様の要求に応える上では必要なことなんですね。

橋本:たとえば、ドライフラワーを入れる贈答用のケース。一見するとシンプルなプラスチックのケースですが、中に入れたものが高級に見えませんか?平面度や透明度が一般的なケースより高いんです。金型材には高級な焼入鋼を使っていますし、研磨にもかなりの金額をいただいています。お客様が望まれているのは、「間違いないものを作ってくれ」。ケースにここまでお金をかけて、高品質なものを求めているわけですから、こちらも最高の技術と道具で応えていきたいと考えています。

 

ライカのブランド力が信頼を高める

YouTubeチャンネルでライカの顕微鏡を紹介してくださっていますね。弊社の中でも話題になっています。

橋本:「ライカを使っている」と紹介すると、同業者やお客様の反応が違います。ライカのブランドに対する信頼が絶大で「確かなもので検査している」という、当社への安心感や信頼感にもつながっています。実際、YouTubeを見られたお客様からのお問い合わせが増えてきました。

※株式会社橋本工業YouTubeチャンネル(ライカグリノー実体顕微鏡S9シリーズレビュー):https://www.youtube.com/watch?v=8hxcMpscz5w

 

それは嬉しいお話です。ところでライカとの出会いはいつですか。

橋本:約25年前になります。関西地区でトップクラスの精密金型の会社と仕事をしていまして、お互いに仕事をスムーズに進めるため、実体顕微鏡を揃えようということになりました。ライカ以外のメーカーも使ってみましたが、長時間覗くと酔ってしまうなど、決め手に欠けました。いろいろ試した結果、一番安定していたライカにたどり着きました。

 

画像の見え方が格段にちがう

現在、S9 Dを導入いただいていますが、どのように活用されているのですか。

喜多:おもには研磨した金型の出来上がりがOKかNGかを判定することに使っています。芸術家であれば完全無欠を求めるのでしょうが、我々が取り扱っているのは工業製品ですので、規格に合格しているかどうかを判定するために顕微鏡が要るのです。だから、あまり見えすぎるとNGが増えてしまうというジレンマをかかえています。

 

見えすぎても困ると。こちらとしては嬉しい反面、何ともリアクションしにくいですが…。S9 Dには9倍ズームのアポクロマートレンズが搭載されていますので、高コントラストで鮮明に見えるんです。

喜多:逆によく見えないと困るものもあります。マイクロ流路と言いまして、血液検査やDNA検査に使う小さなプレートです。髪の毛のように細い流路へ血液などの検体を流して検査します。この流路の中を完璧に磨くわけです。ナノメートルの世界ですから、ライカの顕微鏡がなければ磨けません。特に、医療機器などは、少しでも傷があると医療事故につながる恐れがあるので、見えすぎるくらいの方が安心です。

 

毛細血管の中を磨くような作業ですね。

喜多:そうですね。その点、S9 Dは、焦点深度が深いので、すぐにピントが合うと言いますか、覗いた一瞬でスカッと見えます。見た画像を頭で整理してから理解するようなタイムラグはなく、ストレートに見えたまま入ってきます。ピントを合わせようとして目が疲れることもなくなりました。鮮明に見えるので、小さな穴や加工の表面の傷を見落とさずに済んでいます。

従来型(左)とS9 Dの画像(右)。見え方の違いは明らか。
(画像出典:株式会社橋本工業YouTubeチャンネル

深い焦点深度は、S9 Dの特長のひとつなので、とても光栄です。最大12ミリメートルの焦点深度があるので、ピントが「スカッ」と合わせられます。

橋本:それと、本業ではないのですが、レース用のドローン基盤をS9 Dで観察しています。高校1年生の息子がレースに参加していて、クラッシュで頻繁に基盤が燃えたりします。どこが燃えているのか、不具合はないか、原因を見つけて部品を的確に交換するのに役立っています。おかげさまで、世界選手権日本代表に決まりました。

 

すごいですね、おめでとうございます。S9 Dがドローンレースに貢献していたとは驚きました。

 

焦点距離が広く作業がしやすい

研磨は機械を使わずに人の手で行っているそうですね。

喜多:はい。研磨するだけであれば、機械で行えるでしょう。しかし、磨いていく中で、ピンホール(微細な穴)やオレンジピール(微細な凹凸)が出たりすることがあります。こういったトラブルは製品の見栄えや性能に著しい悪影響を及ぼします。そうした不具合をすべて認知して対応することは、まだ機械には難しいのです。一方、人間であれば、どんなトラブルにも柔軟に対応しながら磨くことができるので、人の手で研磨しています。

 

S9 Dの操作性はいかがでしょうか。

喜多:焦点距離が従来型の3倍近くあり、研磨の工具を動かすスペースが十分あるので、顕微鏡を覗き込みながら作業することができます。しかもグリノータイプなので、ピントが広範囲で見やすいです。金型を傾けても、いちいち調整する必要なくすぐにピントが合いますから、ストレスがありません。それと、LEDライトが搭載されているので、手元がとても明るいのがいいですね。

焦点距離があるため、余裕で手を動かし工具を使いながら作業することも可能。

焦点距離は122ミリメートルありますので、「作業しやすい」との声が多く寄せられています。LEDライトも、拡散光を使うと金属などの表面反射を軽減できる点が好評です。

 

技術指導のティーチングに活用

人の手で研磨されているということですが、そうした技術の継承はどのように行っているのですか。

橋本:社内でお互いに教え合っています。皆それぞれ磨き方にはオリジナリティーがありますので、「この工具が使いやすい」「ここを磨くときは別の工具を使った方がいい」など、オープンに話してノウハウを上手く取り入れています。

 

技術の継承という意味では、社外のお客様にも技術指導されています。自社の技術を公開するのは珍しいのではありませんか。

橋本:確かに独自に培った技術を公開するのは珍しいかもしれません。しかし、人に教えることで、我々の技術スキルも高められますし、技術指導した会社と協力して仕事の幅を広げることができています。

当社が行う技術指導は、金型メーカー様はもちろんのこと、エンドユーザーの大手メーカー様にも行なっています。

 

技術指導には、S9 Dを活用されているのですか。

喜多:S9 Dに装着したデジタルカメラFlexacam C3からモニターに画像を出力して、リアルに情報を共有しながら指導します。4Kの画像処理で、手元で行っている研磨の技が鮮明に映し出されるので効果的です。
静止画と動画を保存できるので、お客様に提出する「報告書」作りにも役立っています。

 

S9 Dの機能を存分に活用されているのですね。最高の研磨を目指して、一流の道具や技術を取り入れ、さらには技術を惜しげもなく公開される。「橋本さんのところに任せたら間違いないよ」と口コミやリピーターが多いのも納得です。

橋本:ありがとうございます。これまで我々の仕事は、細かすぎて何をしているのかわからない、どちらかと言えば人の嫌がる仕事になっていましたが、ようやく今「誰にもできない難しい仕事」という表現に変わってきました。我々がお付き合いしているお客様はその価値を理解してくださっています。これからは、我々にしかできない独自の技術で海外の案件にも力を入れていきたいと考えています。

 

S9 Dのさまざまな活用の可能性を知ることができましたし、御社のポジティブな姿勢に刺激を受けました。ありがとうございました。

 


実機を用いた顕微鏡ワークショップの開催案内をメールマガジンでお届けしています!

ライカIvesta 3(アイヴェスタ スリー)のカタログはこちら

Leica Fusion Optics アポクロマート実体顕微鏡
IVESTA 3

IVESTA 3 は、ライカこだわりの最高峰プランアポクロマートレンズ標準搭載、9倍ズームを実現した最先端光学技術に、さらにフレキシビリティを追求したニューモデルの実体顕微鏡です。

IVESTA 3
顕微鏡カメラ
Flexacam c5

Flexacam c5 は、4Kカメラで高い色再現性と高速表示。PCレスなのにまるでパソコンのような操作感。

Flexacam C5

株式会社橋本工業
橋本 裕之 様

代表取締役

 

株式会社橋本工業
喜多 隼也 様

営業技術

 

株式会社橋本工業

1994年、金型磨き専門業として創業。
様々な金型磨きに携わり続け、プラスチック金型の鏡面磨きでは、家電、車載、医療、光学レンズ等、幅広く手掛けている。
金型鏡面磨きの技術指導を行っており、全国で約1,000人以上の指導実績がある。
大阪ものづくり優良企業賞受賞。
https://www.hk-polish.com

この記事をシェアする

お問い合わせ・サポート

不明点・ご質問は、お気軽にお問い合わせください。