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メディカル 2019.02.18

脳外科手術顕微鏡活用事例/術中の意思決定に役立つ「カラーICG」分かりやすさが患者さんからの信頼にも繋がる

GLOW800 のカタログはこちら

 

基本性能も抜群の手術顕微鏡に「カラーICG」オプションがついた

当施設で今回導入した手術用顕微鏡は、ライカM530 OHXで、GLOW800というオプションをつけています。ライカの顕微鏡ですから、操作性や見え方が良いことはある程度予想できたのですが、視野が全面的に天然色で観察できる、いわば「カラーICG」のオプションがあることを知って、「それは使ってみたい!」と購入を決意しました。ライカのカラーICG「GLOW800」の、日本の第一号機だと聞いています。

 

「カラーICG」による手術精度の向上

従来のモノクロICGの画面が不便だったのは、「蛍光している血管『しか』見えない」という点です。モノクロICG の場合、蛍光して光っている血管が白く浮かび上がる以外、バックグラウンドは真っ黒ですよね。 血管にちゃんと血流が来ているのか、または閉塞しているのかというところを、ICG を使って確認したいわけですが、モノクロの場合は血流のあるところしか光りませんから、本当は血流があるべき場所が閉塞していたといったケースでは、モノクロICG 画像からだと血管構造を把握しにくいとのではないかと思います。 それに、細かい血管、例えば、大きな血管の裏側にある血管は、光っているか、光っていないかが判別しにくいことがあります。上の血管を動かしてみたりもしますが、どうしても白黒だとわかりにくい。その点、GLOW800では、蛍光部位以外の術野も一緒にはっきりと観察することができますから、蛍光していなければ、その血管には血液が流れていないのだなと言う事が一目でわかります。カラーICG GLOW800 の大きな利点です。これは手術の精度にも関わってきます。 モノクロICGしかない時代は「そういうもの」と諦めていましたが、カラーを見てみると、明らかにわかりやすいです。 脳外科ICG モニタ

 

「もうモノクロICGには戻れない」

カラーICGをしっかり観察すると、クリップの位置も把握しやすくなりました。カラーでは血管の端、例えば、動脈瘤の一番根本まではっきり見えるので、クリップが根元までしっかりとかかっているかどうかがわかりやすい。モノクロICGでは、動脈瘤が「光っていない」という情報しか得られないので、クリップによって意図した通りに血流が止まっているのか、何か別の要因で止まってしまっているのかを判断することは難しいと思います。 血管系の手術では、特に動脈瘤にクリップを掛けた時など、目で見ただけでは、周囲の血管にきちんと血が流れているかどうかを判断するのが難しい場合がよくあります。経験を積んでいる医師でさえ、手術が終わったあとで、実は流れていなかったとわかる、ということが稀におきてしまいます。若い医師であれば、なおさら判断が難しくなりますから、GLOW800のような機械を活用することで、より安全に手術ができるようになるのは非常に良いことだと思います。 そういったカラーICGのメリットというのは、助手や、その他の医療スタッフにとっても有用だと思います。脳神経外科医であれば、モノクロのICG画像からでも、ある程度のことは理解できるだろうと思いますが、周りで見ている看護師や麻酔科医は、蛍光している血管だけが映っている画像を見ても、一体何がどうなっているのか、なかなか理解し難いはずです。GLOW800では、血管以外の部位もそのまま映りますから、モノクロICGと比べて状態の判別がしやすくなったと言えます。 カラーのわかりやすい画像が得られるようになったことで、手術後の説明も、看護師や研修医に理解してもらいやすくなりました。カラーのほうが圧倒的に伝わりやすい。カンファレンスで手術に立ち会わない病棟の看護師にも画像を見せましたが、やはり、以前よりも理解が得られやすくなりました。この患者さんは一体どんな手術を受けて、今どういう状態にあるのか。看護師の理解が深まることで、患者さんとのコミュニケーションも円滑になるのではないかと思います。モノクロICGの時代にも画像を見せていましたが、臨場感は伝わりませんでした。 カラー画像であれば、患者さんに対しても、きちんと手術が無事に終わりました、というところを極めてわかりやすくお見せすることができると思いますので、ご希望があれば、対応したいと考えています。患者さんやご家族にも理解していただける画像だと思います。 術中の意思決定に非常に有用であること、そして、誰にでもわかりやすいということから、白黒よりもカラーICG、GLOW800をお勧めしたいです。 脳外科手術 カラーICG

 

「GLOW800」の活用方法と今後の展望

今後の活用方法として、バイパスの手術、今までとは違う症例も視野にいれていきたいと考えています。バイパスがつながっているか、つながっていないかという大きな問題を術中に判断できるというのは、とても大きなメリットですから。 首の血管の頸動脈の手術である頸動脈内膜剥離術においても、血管の開通を確認するのに役に立つと思います。「本来の血管の大きさ」と「光っているところの大きさ」は、白黒では比較しにくいのですが、カラーだと血管全体、背景の状況も見ながら、血管のどの部分が光っているのかを明確に確認することができます。光っている部分が少なければ、そこはまだ血管が細いのだな、とわかります。 GLOW800は、さまざまな血管障害の手術に応用できると考えます。将来に期待することとしては、やはり、リアルタイムに、両目で、立体的に、蛍光を観察できるような新機能を開発してほしい。そうすれば、もっと精度の高い手術が行えると思います。

 

円滑な脳外科手術に必須の使いやすい「オーバーヘッド型」手術顕微鏡M530 OHX

以前からオーバーヘッドのスタンドに使い慣れていたので、今回もオーバーヘッドを目的に作られている顕微鏡を検討していました。オーバーヘッド型の顕微鏡は、設置場所を選ばないため、術者の後ろからアームを入れる事が可能です。そうすると、患者さんの両側にスペースが空き、助手や麻酔台とも干渉しないので、とても使い易いと感じます。例えば、顕微鏡が麻酔台の位置と重なる場合であれば、麻酔台の位置を下げることになりますが、そうすると麻酔科医が患者さんから離れてしまうため、危険を伴う可能性がでてきます。顕微鏡が後ろにあることで、麻酔台が横にあっても手術手順的に不自由がないというメリットがあります。 ライカ製なのでもちろんですが、見え方も抜群です。焦点深度が以前より深く、患部の見えやすさも前のモデルと比べると良くなりました。 従来の機種に比べて、バランスの取り方もより簡単になったと感じています。以前の機種では、ダイヤルを回して、ヤジロベエの左右を合わせるような作業をしていたのですが、今はボタンを押すと自動でバランスを取ってくれますので、手術前の準備や術中の調整もとても簡単です。 また、今回導入した顕微鏡では、ナビゲーション情報を顕微鏡の接眼レンズ内に視野内表示させることができる視野内表示オプションも付けました。いちいち顕微鏡から目を離してナビゲーション画面を確認する必要が無くなったのは大きなメリットです。接眼レンズを覗いたまま、脳内のどこを進んでいるのかを把握できるようになったので、術中の中断が無くなりました。

 

GLOW800 のカタログはこちら

 

拡張現実 (AR) 蛍光システム
GLOW800

ワークフローを中断することなく血流を可視化―ハンドグリップまたはフットスイッチの操作で、ワンタッチ起動する GLOW800 拡張現実 (AR) 蛍光システム。リアルタイムの血流画像によって拡張された立体感のある大脳構造画像を、自然な色彩で見ることができます。白色光による顕微鏡画像と、黒/白の近赤外 (NIR) ビデオを切り替える際にも、手術を中断する必要がありません。

拡張現実 (AR) 蛍光システム GLOW800
大分県厚生連鶴見病院
加賀 明彦 副院長・脳卒中センター長

医学博士 脳神経外科専門医 日本神経内視鏡学会技術認定医 脳卒中専門医 日本脳神経外科学会評議員 日本脳ドック学会会員 日本脳卒中学会会員 日本脳卒中外科学会会員 日本医療マネジメント学会会員 日本救急医学会認定ICLSコースディレクター 日本DMAT隊員

大分県厚生連鶴見病院 加賀 明彦 副院長・脳卒中センター長

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