ライカの画像解析ソフトウェア「Cleanliness Expert」を活用し、注射液や輸液の製造時に混入した異物を、迅速かつ高精度に検出・分析する手法についてご紹介します。
1. 課題
医薬品の品質トラブルを引き起こす「異物混入」への対策
製造業において、品質トラブルを引き起こす要因の一つが「異物混入」です。製造工程では、原料由来の変性物や析出物、カビ、金属、毛髪、繊維、ガラス、プラスチック、虫など、さまざまな種類の異物が混入する可能性があります。 健康や生命に関わる医薬品の製造においても、品質トラブルの原因の約8割は異物混入であるといわれています。 混入した異物を迅速に検出・分析し、その発生原因を一刻も早く特定・排除することは、医薬品の品質や安全性を保つうえで非常に重要です。
目視による異物検出・分析の限界
医薬品を含む各種製造業において、異物の検出・分析はこれまで、オペレーターが目視で種類を判別し、個数をカウントするという手法が一般的でした。 しかしこの手法では、オペレーターの経験値や作業環境の違いにより、精度や再現性にばらつきが生じていました。 また、1件の検出・分析に丸1日を要することもあり、製造ラインへのフィードバック、発生原因の特定、異物の排除までにタイムラグが生じていました。
2. ライカソリューション
Cleanliness Expertを注射液・輸液中の異物分析に活用
ライカでは、医薬品に混入した異物の分析に、画像解析アプリケーションCleanliness Expertを活用することをご提案いたします。 Cleanliness Expertは2014年、自動車や精密機器の部品製造におけるコンタミ計測・清浄度評価を主目的として開発されました。部品の洗浄液をメンブレンフィルターに通し、そのフィルターを顕微鏡とCleanliness Expertを組み合わせたシステムで測定して、異物のサイズ・個数・形状・分類等を自動分析します。 この手法を、注射液や輸液といった薬液に活用しました。薬液そのものをメンブレンフィルターに通し、そのフィルターに残った異物をCleanliness Expertのシステムで分析します。
医薬品製造における4大異物を迅速に検出・分析
医薬品製造における4大異物は、金属・毛髪・虫・ガラスといわれています。 Cleanliness Expertは薬液中に混入するこれらの異物を、30μ以下のガラスを除き、ほぼ確実に検出できます。 オペレーターの経験値等に依存しない分析のため、ばらつきや誤差の少ない、再現性の高い結果が得られます。 また、分析時間が短く、1日に複数件の結果が得られます。そのため、異物の混入原因の調査・排除に取りかかるまでの時間も短縮されます。
蛍光観察による繊維の視認性向上
Cleanliness Expertにおいても、異物の種類や形状をより詳細に分析するには、顕微鏡画像の目視検査との組み合わせが必要となります。 繊維の検出・分析においては、顕微鏡に蛍光観察のための光源やフィルターを追加すると、より明確に視認できるようになります。
このような各種技術との組み合わせも含め、ライカマイクロシステムズでは今後も、Cleanliness Expertの新分野への応用を積極的に進めていく予定です。
- 解析ソフトウェア
- Cleanliness Expert
Cleanliness Expertは、メンブレンフィルターで捉えた異物を顕微鏡やデジタルマイクロスコープで計測し、そのサイズ・個数・形状・分類を解析するシステムです。 バッチ処理による複数のフィルター解析、各種規格に準拠した清浄度検査やレポート出力が可能なため、作業効率の向上とワークフローの改善につながります。