ライカのフル電動金属顕微鏡「DM6 M」と、タイムラプス取得ソフトウェア「LAS X Time-Lapse」を使い、二次電池の充放電中の色変化や形状変化を、電極断面からリアルタイムに可視化する手法についてご紹介します。
1. 課題
充放電時におけるin situ観察の必要性
リチウムイオン電池に代表される二次電池は、正極活物質、負極活物質、電解液、活物質に添加する導電助材などの材料で構成されており、その組み合わせは1,000種以上に及びます。そして電池の性能は、材料の組み合わせやその量など、さまざまな要因に左右されます。
現在、リチウムイオン電池の性能評価には、充放電曲線の計測が一般的に使用されていますが、電池内部の状態はそのデータから分析するしかありません。
より高性能な電池を設計・開発するためには、密閉状態にある電池内部でどんな電気化学反応が起こっているのか、その状態変化をin situ(その場)で視覚的に把握し、情報を設計にフィードバックすることが必要です。
しかし今までは、電池内部を可視化するための確立された手法はなく、行うとしても特殊で大がかりな装置が必要でした。
2. ライカソリューション
電極表面や断面における電気化学反応の進行を、光学顕微鏡下で可視化
ライカでは、フル電動制御の金属顕微鏡システム「DM6 M」と、専用設計の光学観察用窓付き電池断面観察用セル(株式会社イーシーフロンティア製)を組み合わせることにより、この課題を解決しました。特殊な環境やエキスパートは不要、大気圧下で電池内部を可視化します。
この手法なら、充放電中のリチウムイオン電池の電極表面のみならず、断面における電気化学反応の進行状況まで、高精細のリアルタイム・カラーで観察できます。そのため、以下のように多様なin situ観察に活用できます。
- 電極面内の反応分布
- 電極の深さ方向の反応分布
- 電極の活物質の膨張・収縮
- インターカレーションの深さ方向の反応分布
- デンドライト(樹枝状結晶)発生のメカニズム解明
in situ観察例:グラファイト負極の充電時インターカレーションの色変化
グラファイト(黒鉛)負極の充電時インターカレーション(*)の色変化を、in situ観察した例をご紹介します。
グラファイト負極は、リチウムがインターカレーション(*)する充電の過程において、グレー⇒青⇒赤⇒ゴールドへと変化することが知られています。ライカソリューションを使えば、SOC(State Of Charge:充電率)0%から100%の過程において、各反応ステージにおける色変化をリアルタイムに観察できます。
※インターカレーション:負極材料のグラファイトにリチウムイオンが出入りするプロセス。インターカレーションはグラファイトの膨張収縮を引き起こし、負極の構造変化の原因となる。
ライカマイクロシステムズ株式会社&株式会社イーシーフロンティアでは、in situ観察による電池内部の化学反応・物質輸送・状態変化の評価、および電池部材の開発・設計・製造条件の最適化をサポートいたします。
- フル電動金属顕微鏡 DM6 M & タイムラプス取得ソフトウェア LAS X Time-Lapse
フル電動制御の金属顕微鏡DM6 Mは、理想的な観察環境を自動で再現します。さらに、長期間の経時変化を任意の間隔で撮影できるLAS Xタイムラプスモジュールを組み合わせることにより、変化に時間のかかるサンプルも無人で動画記録できます。高さ方向の異なる像を自動的に取得できるため、ピントがあった状態での長時間記録も簡単です。
堅牢なシステムのため除振台は不要、長時間のタイムラプスにおいても、ピントずれへの影響はほぼありません。
長い作動距離&補正環付の対物レンズで、高さのあるセル・ガラス越しでも高精細な観察が可能です。
2009年に電気化学メーカーとして設立後、自社開発したポテンショスタット/ガルバノスタット、充放電装置をはじめ、各種電気化学セルや電極などを提供。電気化学セルにおいては多数のラインナップ数を誇り国内トップクラスの導入実績、またお客様のご要望に応じて製作させて頂くカスタマイズ品も多数。
電池断面観察用セルは、リチウムイオン電池に代表される二次電池の充放電過程に伴う反応進行状態を、電極平面ではなく電極断面からリアルタイムに可視化できるセルです。