一般的な光学顕微鏡は、標本に近い対物レンズと、眼に近い接眼レンズからなります。
顕微鏡の総合倍率は、対物レンズ倍率と接眼レンズ倍率の積を指します。例えば、40xの対物レンズと10xの接眼レンズは、400xの総合倍率を提供します。
顕微鏡は倍率が高いほど、よく見える。そのようにお考えの方も多いのではないでしょうか?実は、顕微鏡の見え方には倍率以外の要素も関わっているため、ある倍率を超えると限界が起こります。
今回は、その理論についてご紹介します。
波長が顕微鏡の分解能を左右する
光学顕微鏡の性能能力として拡大倍率だけでなく、分解能も重要な指標です。微小な2点を見分けることのできる最小の距離を「分解能」と呼び、この距離が近いほど高分解能になります。レイリー(Rayleigh)の式によれば、顕微鏡の分解能は倍率にはよらず、対物レンズの開口数で決まります。
λ=光の波長
n=標本と対物レンズとの間の媒質の屈折率
α=対物レンズの開口角の半分
この式にあてはめると、青色光では、解像限界はおよそd=0.2μm、赤色光では、d=0.35μmです。UV光を用いた場合、0.2μm以下の分解能を達成します。人が肉眼で識別できる分解能は0.1~0.2mmと言われています。
n×sinαの値は開口数(NA)と呼ばれ、対物レンズの分解能の尺度に相当します。開口角は90°を越えることはできず、乾燥系対物レンズの場合、媒質は空気で屈折率は1なので、NAは1を超えることはありません。屈折率1以上の液体を用いると(n>1)、開口数は増加し(最大約1.45)、解像度も高くなります。
図1:可視光のスペクトル
図2:対物レンズの開口数によって、試料の微細な形態を見分ける能力と明るさが変わります。
拡大倍率を大きくすればよいのか?
顕微鏡の拡大像は対応する拡大倍率で接眼レンズに表示されます。解像度と拡大倍率は常に直接的に相互依存していますが、原理上、分解能自体は開口数に依存して拡大倍率には依存しません。低倍対物レンズは、開口数が低く、したがって分解能が低くなります。高倍対物レンズほど高分解能を発揮できるよう開口数は大きくなり、40倍の乾燥系対物レンズの場合は典型的には0.8です。単純に、倍率が高ければ標本がはっきりと(高分解能で)見えるわけではなく、分解能が不十分であれば、いくら拡大しても標本の細部までは見えません。肉眼で正しく観察できる倍率の目安が有効倍率で、目視観察において対物レンズの開口数と総合倍率から、有効倍率は500×NA~1000×NAです。
光学顕微鏡で巨大な倍率を誇るものもありますが、限界分解能の拡大倍率は1400倍以下です。一般的に分解能を伴わない大きな拡大倍率を「無効倍率(バカ倍率)」と呼びます。構造は大きく見えますが、見分けることはできません。
図3:重切削工具製造用の10%コバルト(サブミクロン単位、初期粒径0.6μm)の超硬合金
左 ; 乾燥系対物レンズ NA=0.90
右 ; 油浸対物レンズ NA=1.30
(Konrad Friedrichs GmbH & Co KG、Kulmbach、ドイツ)
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