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インダストリー 2023.03.02

【後編】粒子状物質汚染に対する清浄度解析 ~ 顕微鏡を用いた自動粒子解析のための測定システム ~

自動車部品、電子部品、フィルム、薬品、医療器具など、製造工程に高い清浄度を要求される製品においては、異物の混入が製造歩留まりに大きな影響を与えます。 そのため、混入した異物を一刻も早く分析し、発生原因を突き止めることが、歩留まりの向上につながります。自動車、航空宇宙、マイクロエレクトロニクス、医薬品、医療機器などの業界では、製品や部品の清浄度を定量的に検証するために、自動粒子解析の測定システムがよく利用されています。このブログでは、顕微鏡をベースとした測定システムの活用について説明します。前編はこちら

 

1.微粒子汚染の清浄度解析方法と手順

製品の清浄度の判定方法

清浄度の評価と洗浄工程

微粒子汚染に対する清浄度の評価は、製品コンポーネントが洗浄工程を経る前と後の両方で、直接法と間接法の2つのアプローチで行うことができます[参考文献①]
直接法では、通常、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、粒子の抽出または移動を行わずに表面を直接検査します。直接法の利点は、サンプリングのロスがなく、抽出方法が不要であることです。しかし、基板と区別するのに十分なコントラストを持つ粒子しか容易に検出できないこと、複雑な形状を持つ部品には実用的でないことが欠点です。
間接法は、液体または気体媒体中での捕集、剥離、テープリフトによって、調査対象表面から粒子を抽出または転写し、その後、分析装置で評価します。間接法の利点は、複雑な形状の部品に実用的で、部品全体を検査できることですが、欠点は、抽出工程での粒子の損失、抽出方法による費用の増加、クロスコンタミネーションを避けるためにクリーンな作業環境が必要であることです。

輸送業界向けの清浄度解析:VDA part19とISO 16232

自動車産業では、製品のコンポーネントやパーツに付着した粒子状汚染の定量的な測定について、VDA 19 [参考文献②] ISO 16232 [参考文献③] で定義されたガイドラインに従う必要があります。粒子汚染は、超音波処理、加圧洗浄、機能テストベンチ、攪拌などのさまざまな抽出方法を用いて部品表面から除去され、抽出液の濾過などを介してメンブレンフィルターに移されます。分析段階では、粒子のサイズや材料特性に応じて、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、X線エネルギー分散型分光法(EDS)など、様々な技術で評価することができます。図1は清浄度試験のステップ、図2は粒子分析技術の比較を示しています。

図1:自動車産業向けVDA19[参考文献②]およびISO16232[参考文献③]による製品構成部品・部材の技術的清浄度の評価手順

 

粒子解析のための画像生成法:情報量と前提条件

画像処理による粒子解析では、光学顕微鏡が最も普及しています。光学顕微鏡は他の方法と比較して最も安価な投資である一方、分析に時間がかかる方法の1つです。SEM/EDSは、原因究明など、より詳細な情報に使用されます。(例:粒子の元素組成が必要な場合)

図2:光学(光)顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、マイクロCT3つの粒子解析手法の性能比較

 

顕微鏡の光学分解能は、粒子検出の限界点になります。粒子の大きさが解像度の閾値以下の場合、光学系では解像できず、粒子の詳細な特徴は識別されません。対物レンズの分解能(R)は、試料を照明する光の波長(λ)とレンズの開口数(NA = n – sin α)に依存します。


nは対物レンズが浸されている媒質の屈折率、αは対物レンズに入射または出射する光の最大円錐の半角を表します。(図3参照)[参考文献④]

図3:サンプル上の光学顕微鏡の対物レンズを示す概略図:解像度は、n•sin αで定義される開口数(NA)によって決定される。

 

粒子を正確に検出するためには、メンブレンフィルターの背景に対して粒子の輝度コントラストが十分であることが必要です。明確に定義されたグレー値を使用して閾値を設定すると、画像内に記録された粒子の解析は二値化によって行うことができます(図4参照)。極端な例として、白い背景に白い粒子の場合、粒子を識別できるグレー値を見つけることが難しく、自動解析は困難になります。

図4:フィルター上の粒子の光学顕微鏡画像(A)。閾値以下のグレー値を持つ粒子を、オレンジ/赤で強調(B)。画像のどの領域で粒子が検出されたかを示す。グレースケールで表示されたグレー値に対する画素数のヒストグラム(C)。ヒストグラムの最大ピークは、フィルター背景のグレー値に対応する。画像のグレー値が二値化閾値(赤線)より下(左側)にある部分はすべて粒子として検出される。

 

2.応用例

ライカ工業顕微鏡Leica Cleanliness Expert ソフトウェアを使用した清浄度解析は、最小のパーティクルサイズ5μmで検査が可能です。

局所環境からの粒子堆積のモニタリング

汚染に敏感な製品の多くは、一定の空気清浄度を満たすクリーンルームで生産されています[参考文献⑤]。パーティクルカウンターで行われる空気中の粒子のモニタリングだけでは、局所環境からの粒子沈着のレベルについて明確な結論を出すことはできません。粒子の発生源は複数あり、人為的、あるいは物流工程、製造工程、パッケージ、出荷工程に関連します。クリーンルーム内の浮遊微粒子汚染を定量化するために、10枚の沈降板を重要な工程位置に配置し、7日間の暴露後、沈降板を光学顕微鏡で評価しました。
図5の10枚の沈降板の粒子分析結果から、粒子数の多い測定位置があることがわかります。形態学的側面や光沢などの異なる特徴をさらに分類すれば、繊維や金属(反射)粒子を明確に識別することができるでしょう。

図5:全10枚の沈降板の粒子分析結果を示すカラムチャート。粒子(繊維を含まない)の検出数(青)、金属(反射)粒子の検出数(赤)、繊維(粒子を含まない)の検出数(緑)を示すチャート。

 

ダメージを与える可能性のある微粒子の特性評価

自動車産業における多くの製品部品には、粒子汚染に関する清浄度評価に関する要求事項があります。自動車パワートレーンの高性能化・小型化が進む中、その故障の原因となる微小異物の混入は大きな問題です。異なるサイズの粒子による損傷の影響を系統的に調べるために光学顕微鏡法による清浄度検査とコンタミ解析の手法が用いられます。設定されたシステム構成を持つ試験仕様を繰り返し読込み、ユーザーに依存しない結果を提供します。長さと幅は自動解析によって検出、さらに手動解析によって粒子の高さを測定することもできます。フィルター背景の一点に焦点をあわせて、次に粒子の最高点に焦点をあわせることで、Z値の差から粒子の高さを検出することができます(図6参照)。

図6:標準化された粒子の解析結果。高さ(緑)、幅(赤)、長さ(青)の値はμm単位。

 

洗浄方法の有効性:非洗浄部品と洗浄済み部品の比較

洗浄方法の有効性を、非洗浄部品と洗浄部品の清浄度分析結果を比較することで行いました(図7参照)。図7の結果から、洗浄を行うことで、製品部品表面のパーティクルサイズが50μmから600μmの範囲で大幅に減少することが明らかになりました。

図7:清浄度間接処理を行った非洗浄部品(青)と洗浄部品(赤)の粒子分析結果

 

3.まとめと結論

清浄度は,様々な産業分野の多様な製品または製品部品を対象とした調査により,製品の品質向上に役立つことが証明されています。特に自動車業界では、自動車パワートレーンの高性能化・小型化が進む中、自動車部品に対する「クリーンであること」への要求は、流体部品に留まらず、エンジン制御などの電子部品にまでおよび、かつ年々高まっています。清浄度のバリデーション技術については、粒子分析を含む定量的なアプローチにより清浄度を確認する方法が検討されています。バリデーションは、粒子抽出を行わずに部品表面を直接検査する直接法と、部品表面から粒子を抽出する間接法のいずれかによって行われます。ここでは、微粒子汚染の除去に適用される間接的な検証プロセス、光学顕微鏡を利用した顕微鏡法をご紹介しました。製品洗浄プロセスの有効性、すなわち製品部品の清浄度を特定のレベルにする能力もまた、間接的なプロセスで検証されています。

 

■参考文献■

  1. Kreck G, and Holzapfel Y: Reinheitsvalidierung von kontaminationskritischen Produkten. reinraum online (Dec. 2012); reinraum printline 4–9 (Jan. 2013).
  2. VDA part 19 (2004): Inspection of Technical Cleanliness Particulate Contamination of Functionally Relevant Automotive Components, 1st edition.
  3. ISO 16232 (2007): Road vehicles, Cleanliness of components, Parts 1–10.
  4. Abramowitz M, and Davidson MW: Microscope Objectives: Numerical Aperture and Resolution. Molecular Expressions, Optical Microscopy Division, National High Magnetic Field Laboratory, Florida; Optical resolution, Wikipedia.
  5. Rochowicz M: Große Schritte für die Technische Sauberkeit. Journal für Oberflächentechnik (JOT) 53 (16): 10–11 (2013).

 

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