グラスの選び方で飲み物の味が変わる!そう言われるほど、ガラスの種類の選択は重要です。
ガラスは今から約5,000年前、メソポタミアで作られたと言われています。古代ローマの時代には、すでに芸術性の高いグラスが製作されていました。そして中世になると、ヴェネツィアのガラス職人によって、純度の高いガラスが製造されています。
もっとも古い素材の一つであるガラスは、今も多くの分野で使用されており、厳しい品質基準を満たす必要があります。たとえば、特殊なタイプの光学ガラスがなければ、今日の光学顕微鏡の製造は不可能でしょう。偏光顕微鏡は、平面度の高いガラス・中空ガラス・型押しガラス(プレスガラス)の品質保証プロセスにおいて、迅速かつ費用対効果の高い結晶性介在物検査を可能にします。
結晶欠陥(格子欠陥)
ケイ酸塩ガラスは、組成により特性が大きく異なります。欠陥の一般的な原因には、ガス状の介在物(気泡)に加えて、結晶欠陥があります。欠陥に対して適切な対策を講じるためには、以下のような要因を迅速に特定することが重要です。
- 原材料や古い再生ガラスの耐溶融性汚染物質
- 溶融していない原材料
- 製錬所由来の耐火鉱物材料の腐食残留物
- 失透の発生
迅速で信頼性の高い解析
結晶性介在物と、気泡や製造中に生じた欠陥との区別には、自動検査やスクリーニングシステムを使用するか、または目視検査後に手動で選別します。
ガラスカッターやダイアモンドソーを使って切削した試料は、通常そのまま顕微鏡で検査できます。たとえば大きくて不透明な石の場合、欠陥は研磨され、落射光で観察できます。
ガラスが介在物により「結び目状」にふくらんでいる場合などは、レンズ効果のため、ふくらみ内の小さな介在物に焦点を合わせられないことがあります。この場合、結び目状になっている部分を、ガラスと同じ屈折率の液に浸して観察します(図1)。
ここで紹介している顕微鏡構成では、定量的な偏光光学測定も可能です。ただしそのためには、試料を平らに研磨する必要があります。
ガラス表面から数ミリメートル下にある欠陥を非破壊で観察する場合は、作動距離の長い対物レンズを使用することをお勧めします。薄切片標本の定量的測定およびコノスコープ観察には、10x偏光観察用対物レンズに加えて、カバースリップ補正付きの40x偏光観察用対物レンズが使用されます。
透過光明視野ではレリーフコントラスト観察によって、その介在物の形状、色、および周囲のガラスとの違いがわかります。コンデンサーを下降させるか、または可変開口シャッターを導入することにより、コントラストを高めるための斜め照明が使用可能になります。斜め照明は、最適に設定されたケーラー照明でもほとんど見られないような、強いレリーフ状の縞を形成します。
透過光による偏光観察では、等方性材料と異方性材料を区別できます。自形結晶の場合は、消光位置を確定でき、ラムダプレートの使用によって複屈折の次数を推定できます。
落射光の明視野観察、および落射光の偏光観察は、ガラス表面の欠陥や研磨された試料の観察にのみ適しています。
透過光と斜め落射照明を組み合わせると、介在物の表面の詳細と色を識別できます。
結晶性介在物の例
酸化スズ(SnO2)
一部の製錬所では、加熱電極が耐溶融性の酸化スズで構成されています。過負荷がかかると、この電極材料が剥がれ落ち、青色の異形成粒子(酸化第一スズ SnO)の典型的な凝集体を生成する可能性があります。
これらは、高温の場合はしばらくすると溶解し、結び目状の凝集体を形成します。低温の場合は、長い角柱状の酸化スズ結晶(酸化第二スズ SnO2)が、細い針状の凝集体(図2)またはフェルト状の凝集体(図3)として成長する可能性があります。
ジルコニア(ZrO2)とコランダム(Al2O3)
ジルコニアとコランダムは、電鋳耐火物(耐火煉瓦)の成分です(図4)。
通常の負荷下では、耐火性のあるジルコニアはゆっくりと十分に加熱すれば溶解します。ジルコニアによる欠陥がガラスに多量に発生している場合は、熱過負荷や過剰な流れなどによる局所的な腐食が強いことを示しています。ジルコニアは、元の化合物内に小さな白い介在物として発生するか、典型的な樹枝状結晶を形成します(図5)。
コランダム(Al2O3)は高温でも被焼成物との反応が少なく、通常は結び目のような形や筋を形成しますが、典型的な介在物である丸い粒子の形をとることもあります(図6)。
トリディマイト・クリストバライト(SiO2)
トリディマイト、および稀にクリストバライトは、たとえばアルカリやボロキサイドなどの揮発性成分が蒸発する際などに、SiO2が豊富なガラスの上に失透物として形成されます。トリディマイトは、60°の角度で典型的な結晶凝集体を形成します(図7)。