実体顕微鏡は何で選ぶ?ベストな選択のための検討ポイント

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実体顕微鏡は何で選ぶ?ベストな選択のための検討ポイント

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実体顕微鏡は、ラボや製造現場で使用する日常的なツールの一つです。使用頻度が非常に高く、検査・観察・記録・分析のため1日に何時間も接眼レンズを覗いている方も多いことでしょう。 あまりに日常的なツールなので、普段、特に意識して評価することはないかもしれません。しかし実体顕微鏡の性能や特徴は、生産性や精度を向上させる重要な鍵となります。この記事では、実体顕微鏡を選択する際に確認・検討すべき要素についてご紹介します。

実体顕微鏡の歴史

1890年頃、アメリカの生物学者で動物学者のHoratio S. Greenoughが、光学機器の設計原理を発表しました。この原理は「グリノー式」と呼ばれ、今日でも主要メーカーで使用されています。グリノー式光学系の顕微鏡は、試料のリアルな立体画像を提供します。 続いて1950年代後半、Bausch&Lombは、画期的なStereoZoom®Greenough設計を発表しました。これは倍率が固定式ではなく、ズームを無段階に調整できます。現在の実体顕微鏡のほとんどは、このズームシステムを採用しています。 1957年には、American Optical Companyが望遠鏡やCMO(Common Main Objective)の原理に基づく光学系を備えた、平行光学系実体顕微鏡を導入しました。平行光学系は、光路にアクセサリを追加できる柔軟性と、高い性能を備えているため、グリノー式光学系に加えて各メーカーから発売されました。

図1:ライカの実体顕微鏡 (A)グリノー式光学系 S9シリーズ、(B)~(D)平行光学系 M205シリーズ

実体顕微鏡を選択する前に~4つの条件確認

実体顕微鏡は長くお使いいただくツールであり、用途に応じて正しく選択する必要があります。まずは使用条件に関して、以下4つの点を確認してください。

1. 用途(目的)は?

  • 試料のスクリーニングや分類作業が必要ですか?
  • 組立やピックアップなどの作業が必要ですか?
  • デジタル画像の記録は必要ですか?

2. 観察、視覚化する試料の大きさは?

以下のどちらを優先させますか?

  • 作動距離(対物レンズの先端から試料までの距離)が優先。分解能を多少犠牲にしても、対物レンズと試料との間に空間がほしい。
  • 高解像度が優先。作動距離は短くなってもよい。

3. 何人で使用する?何時間使用する?

  • 顕微鏡を長時間使用する場合は、人間工学に基づいたアクセサリを検討する必要があります。
  • 多数のオペレータが使用する、という場合は、各自が自分に合わせて調整できるタイプの顕微鏡をお勧めします。

4. 予算は?

  • さまざまな試料やオペレータに適応する仕様が、長期的に見ればコスト節約につながります。

顕微鏡の選択時に検討すべき5つの要素

最適な顕微鏡を選択するためには、以下5つの要素を検討することをお勧めします。

1. ズーム範囲、倍率、視野数、作動距離

  • 同じ倍率で繰り返し観察する、という場合は、ズーム範囲が大きくなくても問題ありません。
  • 全体像から目的のエリアを探し、倍率を大きくして詳細を観察する、という使いかたをする場合は、低倍率から高倍率までシームレスにズーム調整できる顕微鏡が便利です。
  • 同じズーム倍率でも、接眼レンズの視野数により、試料を観察できる範囲が変わります。視野数の大きな接眼レンズを取り付けると、試料を頻繁に動かすことなく一目で広範囲を確認できます。
  • 作動距離が大きいほど、試料上部から対物レンズ先端の間の距離が大きくなり、試料の取り扱いが容易になります。

⇒さらに詳しい情報は、「1. 総合倍率:対物レンズ、ズーム係数、接眼レンズ」「4. 作動距離と作業性」へ

2. 焦点深度と開口数(NA)

  • NAが高いほど解像度が高くなりますが、焦点深度は浅くなります。
  • ライカのFusionOpticsテクノロジーは、高い解像度と深い焦点深度を両立します。

⇒さらに詳しい情報は、「2. 焦点深度:倍率と解像度との関係」へ

3. 光学性能

  • プランレンズ:視野中心だけでなく周辺までピントが合い、平坦な像が得られます。
  • アクロマートレンズ:2色(赤・青)の色収差を補正します。
  • アポクロマート(APO)レンズ:3色(赤・青・紫)の色収差と像面湾曲収差を補正します。開口数が大きく、分解能に優れており、理想的な像が得られます。
  • 透過率:試料の細部を観察したいときは、光透過率の高い光学系を使用することをお勧めします。
  • 色再現:試料本来の色を正確に確認することが重要な場合は、高品質の光学系と適切な照明を使用する必要があります。

⇒さらに詳しい情報は、「3. アクロマートレンズ・アポクロマートレンズの光学品質」へ

4. 人間工学

  • 人間工学に基づいたアクセサリを使用すると、作業が容易になり、効率が向上します。たとえば、接眼レンズを通して試料を見ながら、ズームノブとフォーカスノブを簡単に調整できますか?
  • 多数のオペレータが使用する、という場合は、各自が自分の好みに合わせて顕微鏡を調整できることを確認してください。

⇒さらに詳しい情報は、「5. 快適な操作性のための人間工学」へ

5. 照明

  • 最適な照明は、視野全体を均一に照らし、良好なコントラストを提供して、試料本来の色を表現します。

⇒さらに詳しい情報は、「6. 照明の種類」へ

選択時に検討すべき5つの要素:詳細

最適な顕微鏡を選択するために検討すべき5つの要素について、さらに詳細にご説明します。

1. 総合倍率:対物レンズ、ズーム係数、接眼レンズ

実体顕微鏡の総合倍率は、対物レンズ、ズーム光学系、接眼レンズそれぞれの倍率から算出されます。 対物レンズの倍率は固定です。ズーム光学系は、ズーム係数の範囲で倍率を変更できます。接眼レンズを介して観察したときの総合倍率を算出するには、以下の式で表されるように、対物レンズ、ズーム光学系、接眼レンズの倍率を乗じます。

実視野への影響 接眼レンズを抜いて見ると、鏡筒の中に明るい円が見えます。これが対物レンズの瞳であり、すべての光束が均一に通過する場所です。 接眼レンズの倍率が10xで視野数が23、対物レンズとズーム光学系が倍率1xの場合、接眼レンズを通して観察される実視野の直径は23mmになります。

2. 焦点深度:倍率と解像度との関係

焦点深度は、開口数、解像度、倍率の相関によって決まります。 試料を最適な状態で視覚化するには、焦点深度と解像度の最適なバランスを生み出すことです。上位機種では絞りが内蔵されており、低倍率では、絞りを小さくする(=開口数を小さくする)ことにより、焦点深度を大幅に拡大できます。試料のサイズや形状に応じて、解像度と焦点深度の最適なバランスを見つけることが重要です。 FusionOpticsテクノロジーによる高解像度と高焦点深度 ライカマイクロシステムズのFusionOpticsテクノロジーは、高い解像度と深い焦点深度を同時に実現します。 以下の図は、FusionOpticsテクノロジーの原理を表しています。試料を観察した際(1.)、右目側の光路(2.)では、解像度は高いが焦点深度は浅い画像が見えます。一方、左目側の光路(3.)では、解像度は低いが焦点深度は深い画像が見えます。人間の脳は、この2つの別々の画像を組み合わせて(4.)、高い解像度と深い焦点深度の両方を兼ね備えた1つの最適画像として認識します。

図2:FusionOpticsの原理。2つの光路があり(1.)、一方の高解像度画像(2.)と、もう一方の高焦点深度画像(3.)が、脳で1つに統合される(4.)。
動画1:FusionOpticsテクノロジーの原理と利点

3. アクロマートレンズ・アポクロマートレンズの光学品質

対物レンズの光学性能に大きな影響を与えるのが、色収差と像面湾曲収差です。対物レンズは、この2つの収差補正のレベルにより分類されます。 色収差とは、光の波長(色)が違うと屈折率が異なるため、結像位置も異なってしまう現象のことです。波長の短い光の方が、レンズを通過した光の結像位置が短くなります。色収差は、特性が異なる凸レンズや凹レンズを組み合わせることにより補正できます。 アクロマートレンズ

  • 同じ平面で焦点が合わせられる2つの波長(赤と緑)を補正します。
  • 標準的な観察用です。

アポクロマートレンズ

  • 同じ平面で焦点が合わせられる3つの波長(赤、緑、青)を補正します。
  • 各色でピントズレのない、シャープで明るい画像が得られます。

4. 作動距離と作業性

作動距離とは、ピントを合わせたときの、対物レンズ先端から試料面までの距離のことです。検査や品質管理のタスクにおいて、実体顕微鏡の作動距離は操作性に直接影響します。 開口数の大きい対物レンズほど、作動距離は短くなります。また通常は、レンズのグレードが上がるほど、または対物レンズの倍率が上がるほど、作動距離は短くなります。

5. 快適な操作性のための人間工学

オペレータにより、体の大きさや作業習慣は異なります。元々の接眼レンズの位置、フォーカスノブやズームノブの位置などが、すべてのオペレータとって最適であるとは限りません。たとえば、接眼レンズを覗く観察位置が低すぎると、オペレータは作業中に前かがみになり、首に緊張が生じます。 複数のオペレータが操作する場合は、高さをフレキシブルに調整できるエルゴ鏡筒の使用をお勧めします。人間工学に基づいたアクセサリであり、オペレータの体の大きさや作業習慣に合わせてさまざまに調整できます。平行光学系の実体顕微鏡で利用できます。

図3:エルゴ鏡筒を使用すると、体の大きさが異なっても、腕と脚の支えが十分な状態で椅子の快適な位置に座ること、体と頭をリラックスした位置に保つことが可能。

6. 照明の種類

実体顕微鏡での観察において、照明の選択は非常に重要です。適切な照明を使用することにより、試料の特徴を最適な状態で視覚化できるのはもちろん、新しい情報を明らかにできる可能性もあります。使用する顕微鏡と目的に応じて、照明が適切に機能することが重要です。 落射照明 光を透過しない試料に使用されます。光を試料の上から照射し、表面から反射した光がレンズを通って屈折することにより拡大観察します。

  • リングライト(RL):試料を明るく均一に照明できます。さまざまな種類の試料に適しています。
  • 同軸照明(CXI):フラットで高反射性の試料に最適です。特に、微細なクラックや表面品質を解析評価するのに役に立ちます。
  • ニアバーチカル照明(NVI):影がほとんどない照明が得られます。凹部や深い穴のある試料、または大きな作動距離を要する試料の観察に向いています。
  • スポットライト照明(SLI):可変式のファイバー照明です。ハイコントラストの照明が得られ、さまざまな種類の試料に適しています。

透過照明 照明の光を透明な試料に通し、レンズで屈折させることにより拡大観察します。モデル生物などの生体試料から、ポリマーやガラスまで、さまざまな透明試料に使用されます。

  • 斜め透過照明:無色で透明の試料の観察に使用されます。高いコントラストが得られます。
  • 暗視野照明:光沢のある試料、および明視野では観察しにくい、明るい試料の平らな領域の小さな特徴(クラック、小さい孔、微細な突起など)に対して使用されます。解像度の制限を下回る極小構造を明らかにするためにも使用されます。
  • ロッターマンコントラスト法・レリーフコントラスト法:屈折率の変化を明るさの違いとして示す、高度な斜め照明技術です。スリットの調整だけで微分干渉像のように微細構造を観察でき、試料から最大限の情報を抽出します。
Leicaの実体顕微鏡

忠実な色再現性をもち、高解像力・高コントラストの立体像を得られる、信頼性の高い光学システムです。人間工学設計による優れた操作性も備えています。

2D/3Dでのハイクオリティな観察と解析をサポート。LED照明、高性能なデジタルカメラ、使いやすいソフトウェアLAS等との組み合わせにより、さらにパワーアップします。医学・生物学などの研究、および各種産業で、多様なニーズにマッチするソリューションを提供します。

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