光学顕微鏡―その技術と歴史、そして未来
顕微鏡は、約400年前に発明されてから現代まで、ミクロの宇宙の探査に重要な役割を担ってきました。真の発明者が誰であったかは文献にゆずるとして、定説では、1600年頃オランダのヤンセン兄弟が最初に顕微鏡を発明したとされています。そしてそれは、それまで人間の目に気づかれなかったミクロの物体が認識された初めての瞬間だったのです。
学術的な機械としての発展
学術的な顕微鏡の基礎は、イギリス人のロバート・フック(1635~1703)が築きました。光学の原理を知らなかった彼が経験的に組み立てた顕微鏡は、既に今日の機械の基本的な機構を備えており、多くの有機・無機標本の研究に役立ちました。その後の数世紀の間も、有意義な改善の試みが続き、重要な研究も生まれています。しかし、数学的・物理的に顕微鏡結像の基礎が固まり、顕微鏡のシリーズ生産が可能になったのは、19世紀に入ってからのことでした。それから始まった開発の歴史に、ライツとツァイスの名は、永遠に刻まれています。
それは小さな研究所から始まった
顕微鏡のライカは、1849年、数学者カール・ケルナーがドイツのウェッツラーに創設した小さな光学研究所から始まりました。その志はエルンスト・ライツに受け継がれ、1870年、実用顕微鏡がはじめて生産ラインから世に送り出されたのです。1907年には10万台目の顕微鏡をノーベル賞受賞ロベルト・コッホに進呈、それ以降、ライツ/ライカの顕微鏡を使って研究活動をしている彼の姿が度々メディアで紹介され、世界中の話題を集めました。
20世紀にはいり、ドイツのライツ、ユング、イギリスのケンブリッジ、スイスのウイルド、ケルン、オーストリアのライヘルト、さらにアメリカのバッファローといった欧米の光学機器トップメーカー7社が結集し、 世界最大の精密光学企業グループ・ライカが誕生しました。そして母体をなすそれぞれの企業が培ってきた独自の技術が高度に融合され、先進技術の粋を集めた革新的な製品や、使いやすさを追求し用途を広げたアプリケーションソフトが、次々と実用化されていったのです。
顕微鏡で人類の進歩に無限の可能性を
自然科学の発展にとって、顕微鏡は不可欠な道具でした。細胞の発見から伝染病との戦いまで、あらゆる研究は顕微鏡なくしては実現されなかったのです。光学顕微鏡なくしては解決できない研究課題は、現在でも増える一方で、医学、薬理学、また材料研究などの産業分野からも、常に光学顕微鏡の対する新たな課題が投げかけられます。光学顕微鏡は、非常に古くからある機械ですが、鉄屑になるどころか、不断に開発を重ねる新鋭装置であり続けているのです。
顕微鏡のライカは、顕微鏡技術の開発と発展を通して、人類の進歩に貢献できるよう日々努力を続けてきました。たとえば、2014年には、超解像度の顕微鏡開発でノーベル化学賞を受賞した Eric Betzig氏、Stefan W. Hell氏、William E. Moerner氏らの研究を駆使して、これまでの光学顕微鏡の分解能の限界を超える超解像顕微鏡を開発することに成功しました。生きた細胞をそのまま観察でき、生命現象を正確に理解するための重要な技術となっています。
「ライカ」に脈々と受け継がれてきた「世界最高品質レンズ」と「革新技術」へのこだわり。顕微鏡のライカは、現在、ライフサイエンス、インダストリアル、メディカルの 3 つのビジネス部門に分かれて世界中で活躍しており、そのいずれでもマーケットリーダーとして位置付けられています。
ライカの歴史
- 1847年 アメリカで、Spencer Lens/American Optical Instruments設立
- 1849年 Carl Kellner、ドイツ・ウェッツラーに「Optical Institute」を設立
- 1853年 Baush & Lomb Institute、アメリカに設立
- 1869年 Ernst Leitzが「Optical Institute」を引き継ぎ、社名をErnst Leitz社に変更
- 1872年 ハイデルベルグで光学機器会社、R.Jung社創立
- 1876年 ウィーンで光学機器会社C.Reichert社創立
- 1881年 チャールズ・ダーウィンの息子、ホレスが光学機器会社「Cambridge Instruments」を設立
- 1907年 99,999台のライツ社製顕微鏡が世界中で活躍
- 10万台目の顕微鏡がノーベル賞受賞者のRobert Kochに贈られる
- 1921年 スイス・ヘルブルグで光学機器会社、Wild社創立
- 1925年 LEICA 35mm カメラが発表される
- 1972年 Leitz社とWild社との間に協力関係が築かれる
- 1974年 Wild社、Leitz社の株式の56%を取得
- 1986年 Wild Leitz Group創立、Cambridge InstrumentsがReichert-Jungを継承
- 1990年 Wild Leitz社とCambridge Instruments Groupが合併しライカグループとなる 本部をスイスのSt. Gallenに置く
- 1990年 日本法人ライカ株式会社設立
- 1997年 10月1日、ライカグループが顕微鏡部門と測量機部門に分社化され、顕微鏡部門は ライカマイクロシステムズ グループとなる。本部をスイスからドイツのウェッツラーに移転
- 1999年 日本法人ライカ マイクロシステムズ株式会社に社名変更
- あなたのそばで未来を見つめる会社
- 顕微鏡のライカマイクロシステムズ
ものづくり・ライフサイエンス・医療、どの現場においても、顕微鏡を使う人々が見つめているのは、わたし達一人ひとりの未来そのものです。すこやかで心地よい暮らしをつくる社会の一員として、顕微鏡の歴史をつなぎ、ビジネスを成長させながら未来を想うことが、顕微鏡メーカーとしての使命だとライカは考えます。
触れて・学んで・楽しい―顕微鏡のライカ 体験ラボ
顕微鏡のライカ 本社1階の体験ラボでは、さまざまなワークショップ/セミナーを開催しています。顕微鏡選びでお悩みの方、また、いつもの試料でライカ顕微鏡の性能と操作性を試してみたい方は、お気軽にご連絡ください。