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顕微鏡を学ぶ 2021.08.26

デジタルカメラ関連の用語解説

顕微鏡での観察において、今やデジタルカメラは不可欠とも言えます。この記事では、デジタルカメラ技術に関連する以下の用語を解説しています。

 

ビニング

ビニングは、解像度をトレードオフにしてノイズを減らしながら、カメラのフレームレートとダイナミックレンジを向上させる手法です。高速蛍光タイムラプス実験によく使用されます。
個々のピクセルのデータを読み取るのではなく、隣接するピクセルのデータを組み合わせて、スーパーピクセルとして一緒に読み取ります。2×2~8×8のビニング値がよく使用されます。2×2ビニングは、元の1ピクセルの4倍のサイズを1ピクセルとして使用することになります。

以下の表で示すように、ビニングの効果は、カメラで使用されているセンサーの種類によって異なります。

センサー 速度 データ容量 解像度 シグナルノイズ比
CCD
EMCCD
CMOS
sCMOS

 

ビット深度

カメラセンサーのビット深度は、ピクセル配列からのアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を表します。デジタル信号は、グレーレベルまたはグレースケール値によって特徴付けられます。これは、ADコンバータの特徴です。ビット深度が大きいほど、出力できるグレー値が多くなり、画像内でより詳細な情報を確認できます。

 

輝度

輝度は、人やセンサーに影響を与える相対的な強度を表します。デジタル画像の場合、強度はセンサー全体で平均化されます。

 

カラールックアップテーブル(CLUT)

デジタル画像は、個々のピクセルの配列で構成されています。色情報は、すべての色が個別の数値として格納されている番号コードとして保存されます。
カラールックアップテーブルは、主にモニター表示に使用されるRGBカラースペースに基づく値を格納するインデックスです。用途に適したカラールックアップテーブルの選択は、ユーザー自身の判断とニーズに依存しています。
ただし、特定のルックアップテーブルが特定のアプリケーションに役立つということは、経験的に判明しています。たとえば一般的に蛍光のアプリケーションでは、CLUT「グリーン」は、緑色のスペクトル範囲内で発光するAlexa 488、FITC、および他の同様の蛍光色素で染色されたサンプルに使用されます。またCLUT「レッド」は、赤色のスペクトル範囲内で発光するTRITC、TexasRed、Cy3、および他の同様の蛍光色素で染色されたサンプルに使用されます。
「CMYK」は、CMYKカラースペースを扱う特殊なカラールックアップテーブルです。一般的に、カラープリンターでの出力に使用されます。

 

カラーモード/カラースペース(RGB、CMY、CMYK)

すべてのイメージングシステム(モニタ上や印刷)では、あらゆる色は、基本的な単色の組み合わせを基に描写されています。イメージングの方法には、加法混色と減法混色があります。
たとえば黒いモニター画面では、色を生成するために光を放出する必要があるため、加法混色を使用します。色の生成に使用する光のタイプは、red・green・blue(RGB)の3色です。3色すべてが点灯している場合は白が、3色すべてが消灯している場合は黒が作成されます。RGBモデルは、人間の目だけでなく、デジタルカメラやモニターに適応しています。
一方、プリンタによる紙への印刷の場合は、白い基材(紙)の表面から光を反射しなければならないので、減法混色を使用します。プリンタでは、白い基材と組み合わせて特定の色を生成するために、どのインクを・どのくらい使用するか、計算する必要があります。色の生成には、cyan・magenta・yellow(CMY)-red・green・blueの補色-の組み合わせを使用します。この3色が、スペクトル内のすべての色のベースとなります。3色すべてを使用すると黒になり、3色すべてを全く使用しない場合は白になります。
注:実際には黒は、多くの色(インク)の使用を避けるために、また、より鮮やかな黒を得るために、黒のインクを使って印刷されます。このカラースペースはCMYKと呼ばれます。Kはkey plate(黒だけの特殊な印刷)の頭文字です。

 

コントラスト

画像のコントラストは、オブジェクトと背景の、色と強度の違いによって決まります。
数式で表すと、コントラスト(C)は強度(I)の比率(%)となります。この式で示されているように、試料と背景の強度(I)の差が大きいほど、コントラスト(C)は高くなります。
顕微鏡学を参照すると、高いコントラストを生成するには、吸収・反射・回折・蛍光によって試料が光と相互作用する必要がある、と記されています。

 

デコンボリューション

デコンボリューションは、数学的アルゴリズムを適用することにより、元々の顕微鏡画像に対して、焦点ぼけを解決するための情報を再割り当てする手法です。
これにより、ユーザーは高い焦点レベルをもつ鮮明な画像が得られます。また、構造に関心のある試料の場合は、よりリアルで立体的な印象を持つ画像を得られます。

 

ダイナミックレンジ

顕微鏡カメラのダイナミックレンジは、センサーが同時に記録できる信号の最低輝度と最高輝度の比率を表しています。
ダイナミックレンジが低い(狭い)センサーの場合、輝度が高い信号はセンサーを飽和させる可能性があり、低い信号はセンサーノイズで失われてしまいます。ダイナミックレンジが広いことは、蛍光イメージングにとって特に重要です。

 

露光時間

デジタルカメラの露光時間によって、カメラのチップが試料からの光にさらされる時間が決定します。
光の輝度によりますが、この時間は通常、ほとんどのイメージングアプリケーションでは数ミリ秒~数秒での設定になります。

 

ゲイン

デジタルカメラは、光子データをデジタルデータに変換します。このプロセス中に、センサーから来る電子はプリアンプ(増幅器)を通過します。
ゲインは、イメージセンサーによって信号を増幅すること、またはその増幅値のことです。信号だけでなく、ノイズも増幅されることに注意してください。

 

ガンマ(補正)

人間の目の光の知覚は非線形です。私たちの目は、2つの光子が1つの光子の2倍明るいとは認識しません。2つだと1つよりもほんの少し明るい、と認識するだけです。
人間の目とは対照的に、デジタルカメラの光の知覚は線形です。2つの光子は、1つの光子の2倍の信号を誘発します。
ガンマは、人間の目とデジタルカメラをリンクさせるもの、と見なすことができます。これは、次の式で表すことができます。Voutは出力(検出された)輝度値、Vinは入力(実際の)輝度値です。

ガンマを変更する(ガンマ補正を行う)ことによって、線形知覚であるデジタルカメラの画像を、人間の目の非線形知覚に適合させることができます。ガンマ補正は、ほとんどのカメラチップで実行できます。また、ほとんどのデジタル画像ソフトウェアは、独自のガンマ補正オプションを備えています。

 

放射強度

放射強度はエネルギーの一種です。光学の分野では、時間と面積ごとに物体から放出される光エネルギーの量を表すために使用されます。

 

ノイズ

ノイズは、どのような測定においても避けられない、望ましくない特性です。本当に必要な信号を定量化する能力に影響を与える可能性があるため、科学的な画像撮影にとっては大きな懸念事項です。
イメージング時に考慮すべき最も重要なパラメータは、「収集しようとしている信号の量」に対する「画像のノイズ」の比率であるSN比(信号対ノイズ比)です。ノイズはいくつかのカテゴリに分類できます。

  • 光学ノイズ:不要な光信号は、ほとんどの場合、高いバックグラウンドによって引き起こされます。バックグラウンドが高い場合は、サンプルの調整が不十分であったり、サンプルの自家蛍光が高いときなどです。
  • 暗電流ノイズ:センサー内の電子の熱移動により発生し、露光時間に比例して積分されます。暗電流ノイズは、イメージセンサーを冷却するか、露光時間を短縮することで解決できます。
  • 読み出しノイズ:カメラのセンサーから電荷が読み取られるとき、信号に取り込まれてしまう電気的なノイズです。読み出しノイズは、センサーの読み出し速度を遅くしてフレームレートをできるだけ下げるか、より高度なタイプのセンサー(EMCCDやsCMOS)に切り替えることによって低減できます。
  • フォトンショットノイズ(光ショットノイズ)センサーに当たる光子の確率的な性質によって引き起こされる、光信号に固有のノイズです。このノイズは、光量が非常に低い場合のみ関係します。画像へのショットノイズの影響は、より多くの信号を収集することにより軽減されます。

SN比を改善する最も簡単な方法は、より長い時間積分すること、または照明の光量を高めることによって、より多くの信号を収集することです。ただしこのアプローチは、常に実行できるとは限りません。実行できない場合は、低ノイズのカメラが必要になります。

 

ナイキスト定理

顕微鏡でのイメージングは、アナログ信号をいかに精度よくデジタル化するか、が重要です。サンプリング周期とは、どれくらいの時間間隔でセンサー値を取り込むかを意味しており、サンプリング周期が短いほど精度が良くなります。
また、サンプリング周波数が元の信号の周波数の2倍より大きければ、元の信号の復元が可能である、という定理があります。これを標本化定理またはサンプリング定理といいます。たとえば2Hzの信号は、4Hzより高い周波数でサンプリングする必要があります。逆に言えば、サンプリング周波数の1/2の周波数までが、再現可能な信号であるということです。サンプリング周波数の1/2の周波数のことを、ナイキスト周波数といいます。

ナイキスト定理では、サンプリングされたデータから元の入力情報を再現するためには、サンプリング周波数が入力信号の2倍以上の帯域幅でなければならない、と定義しています。
デジタルカメラの場合、これは主にピクセルサイズに現れます。最良の結果を得るには、ピクセルは解決する最小構造の3倍に、つまり、解決可能な単位あたり3ピクセルの最小数を使用することをお勧めします。

 

ピクセル(画素)

カメラ内のピクセル(画素)は、センサーの基本的な光感度の単位です。CCD、EMCCD、CMOS、SCMOS顕微鏡カメラを含む、2次元アレイセンサすべてに適用されます。
センサーのピクセル数は、頻繁に使用される単位です。500万画素のカメラは、5,000,000ピクセルとなります。ピクセル数は、センサーの解像度と混同されることがよくありますが、個々のピクセルはセンサーの種類によって大きく異なる可能性があります。

 

量子効率(QE)

量子効率とは、入射するフォトン(光子)を電荷に変換する効率を意味します。高い量子効率を実現することが、一つのフォトンを一つの信号として正確に出力できることに繋がります。
高い量子効率を実現するためには、フォトンが画素に到達するまでに、どれだけロスをなくすかが重要です。センサーのQE曲線は、波長によって異なります。

 

RGB/グレースケールヒストグラム

画像の各ピクセルは、特定のグレースケール値をもちます。グレースケール値のスペクトルは、純粋な黒(0)から純粋な白(8ビットの色深度で255、12ビットの色深度で4095など)の範囲となります。
グレースケールヒストグラムは、関心領域(regions of interest:ROI)内のグレースケール値の分布を示します。ピクセル数は各グレースケール値に応じて決定され、結果は曲線として表示されます。
ヒストグラムを使用すると、カメラの露出時間などのさまざまな設定を最適化できます。グレースケール値(x軸)が滑らかに分布していることは、カメラのダイナミックレンジが最適に活用されていることを示します。

 

ラインプロファイル

このツールは、線形の関心領域(ROI)に沿ってグレースケール値を測定し、それを曲線としてグラフィカルに表示して、統計処理を実行します。

 

スタックプロファイル

このツールは、関心領域(ROI)を使用して平均グレースケール値を測定し、それを曲線としてグラフィカルに表示して、統計処理を実行します。

 

飽和

デジタルカメラの基本的な動作原理は、フォトダイオードに当たるフォトンが電子を誘導し、それが収集され、移動され、最終的にデジタル信号に変換される、という流れです。
電子の移動に関しては、2つのボトルネックがあります(CCDカメラの場合)。

  • 個々のフォトダイオードの充電容量(飽和容量・フルウェル容量)
  • カメラチップの最大電荷移動容量

いずれかを超えると、追加情報をカメラで処理できなくなり、デジタル画像にアーティファクト(ブルーミングなど)が発生します。
注:LAS Xソフトウェアのルックアップテーブル(O&U)は、飽和の制御に役立ちます。

 

顕微鏡用カメラのセンサータイプ(CCD、EM-CCD、CMOS、sCMOS)

  • 顕微鏡用CCDカメラ:CCDは電荷結合素子(Charge Coupled Device)の頭文字です。CCDは半導体チップであり、デジタルカメラでは感光領域がセンサーとして使用されます。CCDセンサーが光を捉えて電荷に変換することによって、デジタル画素データが得られ、画像が形成されます。
  • 顕微鏡用EM‐CCDカメラ:EM-CCDは、電子増倍型の電荷結合素子を意味します。EM-CCDはCCDセンサーの1種で、CCDの読み出しノイズを上回るように低光量シグナルを増幅します。
    EM-CCDカメラは弱い光を検出できることで知られているため、低光量カメラとも呼ばれます。高感度が特長で、超低光量で高速の生物学的現象を撮影するのに有用です。
  • 顕微鏡用CMOSカメラ:CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)は、相補性金属酸化膜半導体を意味します。CMOSとCCDの大きな違いは、シグナル電子の読み出し構造です。コンピューターのCPUやメモリーにも使われているCMOSのLSIと、同じ構造をしています。たくさんのトランジスター素子を集積したものがLSIですが、このトランジスター素子の部分に「受光素子」と「アンプ」を組みあわせて光センサーとしたのが、CMOSセンサーです。
    個々の光感知ダイオードの多重読み出し増幅器のおかげで、CMOSの読み出し速度はCCDを大幅に上回っています。ただし高速読み出しには、ローリングシャッターにおける歪みという代償があります。CMOSはすべての画素を同時に取得するのではなく、画像全体を高速でスキャンしてデータを収集するため、露出時間差によって歪みが引き起こされることがあるのです。
    一方、CCDセンサーは入射光子を収集しながら電荷を蓄積するため、すべての画素を同時に読み出すことが可能です。これによって、歪みを回避できます。
    従来、CMOSはCCDと比べてSN比が低かったのですが、現在では高品質のCMOSカメラがたくさんあります。さらに、グローバルシャッターを備えたCMOSカメラの登場により、ローリングシャッターによって引き起こされる歪みが解消されました。
  • sCMOS顕微鏡カメラ:sCMOSは、顕微鏡用CMOSカメラから進化した科学用CMOSカメラのことです。sCMOSセンサーは、画素列ごとにアンプを搭載し、並列読み出しを行うことによってアンプの周波数帯域を下げ、読み出しノイズの低減を実現しています。高速フレームレート、高ダイナミックレンジ、低ノイズといった特長は、ハイエンド蛍光イメージングアプリケーションを完全にサポートします。
センサーのタイプ:CCD(左)、EM-CCD(中央)、sCMOS(右)

 

SN比(信号対ノイズ比)

SN比(信号対ノイズ比、SNR)は、画像の全体的な品質を左右します。SN比が高いほど、画像の品質が向上します。
ここで言う信号とは、観察対象のオブジェクトから発生するフォトンの数を指します。フォトンはセンサーによって収集され、電気信号に変換されます。
一方、ノイズとは、センサーへのフォトンの影響の確率的な性質を指します。検出されるフォトン数の変動は、フォトンショットノイズと呼ばれます。他にも、ノイズの原因には検出器の暗電流ノイズ、ADコンバータからの読み出しノイズ、サンプルのバックグラウンド、室内照明などがあります。

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