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インダストリー 2018.06.28

宇宙、惑星から細胞まで―圦本尚義が語る、同位体顕微鏡とイメージングの可能性

まるで人を検査するように同位体マーカーを観察

圦本尚義―世界で初めて小惑星のサンプルを回収した後、無事に地球帰還を果たした小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトメンバー。北海道大学教授で、宇宙科学の第一人者。ライカの高圧凍結装置と、ウルトラミクロトーム、また凍結置換装置を導入し、世界で唯一の同位体顕微鏡でイメージングを行なっている圦本先生に、他では出来ないユニークなご研究内容についてお話を伺いました。

 

同位体顕微鏡って何ですか?

同位体顕微鏡は、名前の通り、同位体*1の分析を行なうための顕微鏡です。高性能な光学顕微鏡くらいの分解能があって、固体の組織を見ることができます。同位体に変化が起こるような実験を行なうことで、どのような組織が新しく置き換わったのか、ということを観察できるところが特徴です。これまで見ることができなかったことも見えてきます。 (*1) 同じ原子番号を持つ元素でありながら、その質量が違う原子核が存在する場合、それを互いに同位体である、という。原子核に存在する中性子の数が異なる際に、質量の違いが起こる。 北海道大学創成研究機構 Isotope Imaging Laboratory

 

同位体顕微鏡を使ってイメージングするというのは、とてもユニークなことですよね?

世界でも、うまくイメージングできているのは、北海道大学くらいだと思います。

 

どんな元素を観察しているんですか?

細胞とか組織をつくっているふつうの元素ですね。C(炭素)とか、H(水素)とか、N(窒素)とか。一般的には、分子の形で見て、タンパク質や乳酸がどこにあるか、といったことを観察するんですけど、その中にある、例えばアミノ酸の窒素同位体なんかを「ドープ」して、マーカーを組み込ませてやると、アミノ酸の代謝を見ることが出来たりする。 この方法でラベリングすると、蛍光や抗体を使用してラベリングした時に起こるような、分子の種類が変わってしまう、といった妨害が無いんです。例えば、ターゲットがマウスならば、食べ物や飲み物に混ぜて与えてやるだけで、マーカーの位置を特定することが可能になります。まるで人の検査をするのと同じような感覚です。日常が見える、と言った感じでしょうか。同位体顕微鏡ならではのユニークなポイントだと思います。

 

高圧凍結装置
Leica EM ICE

ライカEM ICEは、電気刺激モードが搭載可能な唯一の高圧凍結システム。1nmスケールの構造的な分解能とミリ秒単位の時間分解能を実現した、高圧凍結を施す準備が整いました。刺激的でわくわくするソリューションです。

高圧凍結装置 Leica EM ICE
北海道大学 理学研究院 自然史科学 教授
圦本 尚義先生

北海道大学(教授) 北海道大学 理学研究院 自然史科学 教授・JAXA 地球外物質研究グループ長 1980 年筑波大学第一学群自然学類卒。1985 年同大学院博士課程修了。理学博士。筑波大学地球科学系助手・講師、東京工業大学理学部助教授を経て、2005 年より現職。2016 年クロスアポイントメント制度で JAXA 地球外物質研究グループ長を兼ねる。

北海道大学 圦本 尚義先生

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