セミナーの概要
自動車パワートレーンの高性能化・小型化が進む中、その故障の原因となる微小異物の混入は大きな問題です。自動車部品に対する「クリーンであること」への要求は、流体部品に留まらず、エンジン制御などの電子部品にまでおよび、かつ年々高まっています。 しかし、ISO16232が発行され、自動車部品の清浄度検査が標準化されているにもかかわらず、
といった戸惑いの声が多いのも実情です。 今回のセミナーはこうした声にお応えし、部品清浄度評価用クリンリネス・キャビネットのメーカーである日本ポールと、光学顕微鏡のメーカーであるライカが協業し、開催いたしました。 「ISO16232清浄度検査の概要、および何を・どこまで遵守すべきか」「光学顕微鏡法による清浄度検査とコンタミ解析で留意すべき点は何か」を中心としたセミナーに加えて、最新の技術・システム・ソリューションのご紹介、および実機のデモンストレーションまで盛り込んだ、充実した内容となりました。
日本ポールによるセミナーのみどころ
自動車部品メーカーの中には、「自動車メーカーからのトップダウンで、ISO16232やVDA19.1に準拠した清浄度評価を実施するよう指示があり、規格にそった評価を実施・レポートしないと今後納品できなくなる」といった状況に面しているところもあります。 しかし、ISO16232はなかなか理解しにくい規格でした。その理由は以下の3点です。
- ISO16232はJIS化されていないので日本語版がなく、英語で読むしかないため、ニュアンスが分かりにくい。
- 2018年版の前には2007年版があった。2007年版は残渣の洗い出し方ごと・分析方法ごとに分類された10部構成だったが、2018年版はすべてが統合された。そのため、すべてに目を通し、必要なことがどこに書かれているかを探さなければならなくなった。
- 一読しても、遵守すべきこと・推奨されること・実施しなくてよいこと、の線引きが分かりにくい。
セミナーでは、これらの疑問にお答えするべく、以下のような内容が解説されました。
- 規格の読み方:ISO規格では、規定(必ず守らなければならないこと)には「Shall」が使われている。したがって、以下のような意味となる。
- Shall:必ず行わなければならない
- Shall not:行ってはならない
- Should:(特段の考慮すべき事情がないかぎり)行うべきである
- Recommend:行うのが好ましい、行うことが推奨される
- ISO16232の2007年版と2018年版の違い:2007年版では、分析方法が質量法、光学顕微鏡法、SEM/EDX分析、パーティクルカウンター法と分析方法ごとにまとめられていた。これが2018年版では標準分析・拡張分析・簡易分析にセクション分けされ、光学顕微鏡法は標準分析と拡張分析に、SEM/EDXは拡張分析に含まれるようになった。さらに2018年版では、光学顕微鏡法での粒子計数に、画像解析だけでなくスキャナーの使用が認められるようになった。また、新たな分析方法としてLIBS、ラマン分光法、赤外分光法、X線マイクロトモグラフィーが追加された。
- ISO16232とVDA19.1との違い:VDA19は、粒子計数法による洗浄度検査の有用性を示したドイツ自動車工業会により、2005年に初版が発行された。VDAはドイツの自動車産業の業界規格であり、それを国際規格にまとめたのがISO16232である。
ライカによるセミナーのみどころ
ライカマイクロシステムズからは、光学顕微鏡法による清浄度検査とコンタミ解析の手法が解説されました。
- 顕微鏡法による分析の場合は、比較的に滑らかな表面をもつ発泡膜フィルターが適している。
- 再現性の観点から、検査時の明るさや閾値といった条件を一定にする必要があるが、その機能を備えている装置と備えていない装置がある。
- ISO16232では、メンブレンフィルター全体の分析が必要である。フィルターでの捕集においては、粒子が均一に分離されており、重なりがないよう調整することが、画像解析を行ううえで非常に重要である。
- 光学顕微鏡では、目視とディスプレイの両方で確認できる。粒子がメンブレンフィルター同様の白色または透明である、粒子がフィルター上で接触または重なっている、といった場合でも、熟練作業者によってダブルチェックを行なうことによりリスクを回避できる。
- ライカ Cleanliness Expertは、ISO16232の2018版の9章「付着残渣測定法」で規定されている顕微鏡法に準拠している。画像の明るさや2値化のしきい値などが簡単に設定できる。接眼レンズ付きで目視観察にも対応しているため、人によるダブルチェックも可能。
- Cleanliness Expertには、ISO16232の2018年版で拡張分析として採用されたLIBSモジュールが搭載できる。LIBS搭載システムなら、清浄度検査のあと、粒子の元素を定性分析(同定)することも可能。
また最後に、LIBS搭載システムの実機紹介およびデモンストレーションが行われました。
– ご参加くださった皆様の声 –
セミナーの内容
プログラム1
-
演題
-
ISO16232:自動車部品の清浄度検査の概要と評価手順 ポールの部品清浄度測定技術:クリンリネス・キャビネット
-
演者
-
日本ポール株式会社 応用技術研究所 難波 竹已
プログラム2
-
演題
-
光学顕微鏡法による清浄度検査とコンタミ解析 ライカの自動粒子解析とLIBS分析 ライカ光学顕微鏡とコンタミ解析システムの実機ご紹介
-
演者
-
ライカマイクロシステムズ株式会社 インダストリー事業部 森下 達治
セミナーの対象者・日時・場所
-
セミナーの対象者
-
「部品清浄度の測定や、付着残渣の分析が必要だが、何から始めたらよいのかわからない」とお困りの方
-
日時
-
2月18日(火)13:00~17:00
-
会場
-
ライカ マイクロシステムズ東京本社1F 東京都新宿区高田馬場1-29-9
-
セミナーのご案内
-
- ライカ Cleanliness Expert+LIBSシステム
Cleanliness Expertは、コンタミ(異物、パーティクル、介在物、残渣、清浄度)の粒子形状や大きさを解析できるシステムです。ライカの高い光学性能とISO16232/VDA19国際規格に準拠した機能で、根気と時間がかかる作業を大幅に効率化。さらにLIBS(レーザー誘起ブレークダウン分光法)モジュールを搭載することにより、検出したコンタミの定性分析がシームレスに実施できます。