僕だって虫を採ろうと思って生まれてきたわけじゃないけれど―養老孟司の昆虫採集

いきものと顕微鏡

僕だって虫を採ろうと思って生まれてきたわけじゃないけれど―養老孟司の昆虫採集
写真:ハービー・山口

別荘の名前は「養老昆虫館」

養老孟司―1937年鎌倉市生まれの作家で、東京大学名誉教授。昆虫採集は趣味だが、自身の別荘を「養老昆虫館」と名付けてしまうほど熱中している。ライカの顕微鏡3台を使いこなし、本格的な標本制作を行う養老孟司先生に、昆虫観察の楽しさを聞きました。

昆虫採集をはじめたきっかけは何ですか?

養老:子供のころから、虫を見るのが大好きだったんですよ。見ているといろんな発見があって、なんだこれっ?て。なんでこんなことになっているのか考えたり、調べたりが楽しくてこれは中毒みたいなものだよね。僕だって虫を採ろうと思って生まれてきたわけじゃないけれど、子どもの時から、なぜか虫を採るようになってしまったんです。

養老孟司

海外の虫も集めてらっしゃると聞きました。

養老:海外、東南アジアなどで採集して持って帰るときは、着物のたとう紙にくるんだり、ビニール袋入れておいて、チャックをつけて、それにデータと虫を入れて持って帰る。しばらく乾わきませんから、そうやってうちへ持って帰ってきて、それからが大変なんです。

持ち帰ったあとは、どうするんですか?

養老:僕は洗うので、結構時間かかるんですよ。洗剤は使いたくないんだけどね、カビ落としには洗剤も使っています。虫についているゴミにカビが生えてしまうので。

顕微鏡はどのように使うんですか?

養老:水洗いした後、顕微鏡で見ながら細いゴミを取り除いていきます。筆とかピンセットなんかが棚の側に置いてあるので、それを使って。作業のほとんどは、顕微鏡をのぞきながらですよ。フォトショップで絵を描いてる時くらいかな、肉眼で見るのは。顕微鏡で見ていると、足の位置が観察の邪魔になったりすることがあるので、動かしてやることもあります。これ、乾いてからも結構動くんです。関節のところでちゃんと動かしてやれば壊れない。

養老孟司

芸術品ですよね。

養老:そうでしょ。人には呆れられますがね。一頭ずつ、大きいのは針を刺し、小さいのは台紙に貼り付ける。それにいつ、どこで、だれが採ったかを書いたラベルを付けて標本にします。初めは、どこで取った何、というのが分かるように程度に、簡単に作っておくこともあるけど、いざ、ちゃんと調べようと思った時には、きちんと作り直します。

顕微鏡をのぞくのは楽しいですか?

養老:楽しいも何も。一回やりだすと何日も見続けちゃう。虫の表面の凹凸が良く見えるように、ライティングを変えてみたりね。結構苦労もするけど面白い。

ライカの顕微鏡だけで3台。それ以外に、電子顕微鏡までお使いとは驚きです。

養老:そう、呆れた!卓上型電顕があると聞いて、即買おうと思った。ライカの光学顕微鏡と組み合わせて使うと、かゆいところに手が届くという感じになる。

それぞれ使い分けされているんですか?

養老:どれも必要なんですよ。例えば、毛の数を数えようと思った時。実体顕微鏡だと光の当て方によって毛が見えなくなってしまったりするから、精密に見たい時は、透過光がいい。電顕であれば、毛が抜けた跡まで確実に見えるからすごいね。ただ、この走査電顕というのは、焦点深度が深いために、平面の凸凹が消えてしまって、真っ平らになるんですよ。

昆虫観察が本当にお好きなんですね。

養老:この虫の、この種類の…という知識が完全に記憶に入ってしまうまでは、結構時間がかかるんですよ。その間ずっと、ちゃんと記憶に残るまで見ていないといけない。

皆さん「観察」という言葉を良く使いますけど、観察している時というのは、ほとんどは先入観を作っているわけです。こういうふうに見えるものだって。そうすると新しいもの、別のものが見えたときに、あれ違う、と気がつくんですね。でも十分な時間をかけて観察しなければ、違いに気がつくことは出来ない。

ついつい長時間集中して顕微鏡を覗いてしまいますね。だから、顕微鏡は、長く使えて、よく見えて、疲れないというのが重要なんです。

養老孟司

ライカの顕微鏡も、長く使えて、よく見えて、疲れない?

養老:ライカの顕微鏡は1日見ていても疲れにくいから良いですね。収差がないところも気に入っています。確実に見えるから安心する。ライカで昆虫の表面をみると、凸凹の表現がびしっと見えて面白いですよ。もう10年になる顕微鏡もありますが、壊れない。ライカの顕微鏡は堅牢で持ちが良いですから。個人で買うなら死ぬまで使い続けられる顕微鏡がいい。最近は、実体顕微鏡の M205C を中心に使用しています。

実体顕微鏡
ライカ M205C

高い分解能と深い焦点深度を両立する革新的な FusionOptics 技術によって、微細な構造も理想的な3D 画像として観察できます。ライカ M205 C は分解能 0.952 µm を達成した世界初の実体顕微鏡です。

実体顕微鏡 ライカ M205C

解剖学者
養老 孟司先生

作家・東京大学名誉教授。1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業、解剖学教室に入る。1995年東京大学医学部教授を退官し現職。趣味は昆虫採集で、2005年に建てた箱根の別荘は「養老昆虫館」。

解剖学者 養老 孟司先生
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