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メディカル 2018.10.26

スペシャル対談―鮮明で正確な画像情報が求められるドライアイ診療の最前線

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眼科手術で視認性の向上が重要視されているのと同様に、外来や研究・教育の現場でも、より鮮明で正確な画像情報が求められている

「新しい眼科」6月号の写真セミナーに「画像鮮明化ソフトを使用した涙液層破壊パターンへの応用」が掲載されました。最新のアルゴリズムを使用して画像の持つデータを最大限に引き出す画像鮮明化ソフトウェアと、最新のドライアイ診療・治療法がコラボレートした眼科診療の最前線です。著者である京都府立医科大学眼科学教室 病院教授の横井則彦先生、そしてソフトウェアの開発責任者である株式会社ロジック・アンド・デザインの小林正浩開発本部長にお話を伺いました。

 

Leica:まずは、先生のご研究内容についてご紹介いただけますか?

 

横井先生:近年、日本のドライアイ診療にパラダイムシフトが訪れまして、角膜の上の涙液層の動態および、涙液層の破壊パターン(ブレイクアップパターン)を詳細に観察することで、目の前の患者さんのドライアイが、眼表面のどのような成分が足りないために起こっているのか、そのドライアイがどのようなタイプのドライアイなのか、どのような成分を治療で補えば、ドライアイを改善できるのかが分かるようになりました。その新しいドライアイの診断方法は、Tear Film Oriented Diagnosis (TFOD;眼表面の層別診断) と呼ばれています。今回の総説では、ドライアイ患者さんの涙液層の観察像に見られたブレイクアップパターンとそれを画像鮮明化ソフトを用いて鮮明化した画像について、紹介しています。

 

小林開発本部長:涙液層のブレイクアップパターンを評価するために、染色した涙液を撮影するんですよね?

 

横井先生:ドライアイの診断ではダークスポットと呼ばれる涙液層の破壊像を観察するわけですが、フルオレセイン(蛍光色素)を用いて染色した涙液層の観察像は、きれいに撮影するのが難しいんです。それに、涙液層は動的なので、ともすれば鮮明な像が得られにくい。そこで、小林開発本部長が開発された画像鮮明化ソフト「softDEF*」を試してみたんです。

 

小林開発本部長:もともとは、監視カメラの映像を見やすくするために開発したアルゴリズムなんですが、画像が持っている情報を人間の眼に見えやすいように強調する技術であるため、医療や研究の分野でも広く活用していただけるのではないかと思っています。

 

横井先生:人間の眼では認識できなかった小さな色の変化などを、見えやすくしてあげるだけなので、画像を加工して別なものにしているわけではないんですよね。

 

小林開発本部長:そのとおりです。なので、画像処理の影響で、本来は写っていない線などが浮かび上がってしまうといったことは起こりません。ただ見やすくしているだけで、元の画像データの分布を変えているわけでは無いんです。ですから、監視カメラ映像の場合には、証拠物件として裁判で使用することができます。医療や研究の分野でも、画像加工以外の方法で鮮明な画像が得られることは大きなメリットではないかと考えているんです。

 

横井先生:使ってみて非常に驚いたのは、ダークスポットがものすごくきれいに浮かびあがって見えたということです。一見、あまり上皮に傷が無いように見えていた画像も、このソフトにかけたとたん、ものすごく良く見えたので、とにかくびっくりしました。ブレイクアップパターンが非常にコントラストよく明瞭に描出されただけではなく、ドライアイに伴う点状表層角膜症も非常に鮮明化され、まさに画像鮮明化ソフトウェアの有用性を肌で感じました。今回の総説では、フルオレセイン観察像のみ示していますが、カラーの前眼部写真やその他、眼底写真などにも応用可能であることをすでに体験ずみで、現在投稿中です。

 

小林開発本部長:蛍光を捉えるというところで、露光の設定などが難しいのでしょうか?

 

横井先生:とらえる蛍光の波長などは、プリセットされた設定があって、フルオレセイン像を撮るのか、目そのものの観察像を撮るのか、目的によって使い分けるようにはしているんですけれど。フルオレセインの場合は、色素の量が少し多いだけでうまく光ってくれなかったりして、思ったように撮れないこともよくあります。観察対象によって見え方は変わりますから。眼底写真とか、内皮スペキュラー検査による角膜内皮細胞の写真とか、いろいろ試してみたんですけど、全てものすごくきれいに見えました。今までは、フォトショップなんかで加工しようと努力していたんですが、写真の部位ごとに細かく処理をしようと思うと大変な手間がかかってしまって。かといって写真全体を一気に加工してしまうと、1箇所がきれいになると、別の箇所が犠牲になる…といったことが起こるわけで。

 

小林開発本部長:画像情報の分布に関係なく全体に一律で処理を加えてしまうと、そういった問題が起こりますよね。softDEF* は、自動的に画像を分割して、それぞれのエリアに合わせて必要な処理を計算するので、そうはなりません。 横井先生:外来なんかでも、眼表面の上皮障害がうまく撮れていなかった!ということが起こりますから。後から鮮明化できるというのは大きいと思います。

 

小林開発本部長:画像や映像の活用というのは臨床や研究の現場で不可欠なものですか?

 

横井先生:現在、画像は日常診療でまず欠かせないですね。最も一般的なのは細隙灯顕微鏡の画像ですけど、他にも、角膜形状解析画像、内皮スペキュラー画像、涙液観察像、前眼部、後眼部のOCT画像、手術動画など、あげればきりがないほど、眼科では、画像情報は増える一方です。

 

小林開発本部長:撮影した画像はどんなふうに活用されるんですか?

 

横井先生:画像は電子カルテから参照できるようになっていて、まず、患者さんへの説明に使用しますから、そこできれいな画像が出てくるというのは非常に重要です。フルオレセイン(蛍光色素)の画像なんかは、鮮明に捉えられるとすごくインパクトがあって説明がしやすいですね。

 

小林開発本部長:より鮮明で正確な画像情報が求められているということですね。

 

横井先生:そのニーズはますます高まっていると思います。百聞は一見にしかずで、画像、映像の情報があれば、多くを語る必要がないことは、誰もが思うところですよね。教育においても、デジタルプレゼンテーションでの講義は当たり前で、記憶に残る、鮮明な画像が求められます。研究でも、顕微鏡をのぞいて、写真を撮って、それを論文にするという、図の作成の部分で、画像がとても大事になってきますね。みなさん、できるだけ精巧な機械を求めて、いいもので撮ってというふうに工夫をしていると思います。

小林開発本部長:光学性能の向上は顕微鏡メーカーにお任せするしかありませんが、レンズの性能を補うという意味では、画像鮮明化がお役に立てると思います。

 

横井先生:眼科手術においても、視認性の向上というのが重要なキーとなっていますから、さまざまな状況に適応できる手術環境を整備するという意味でも、最新の設備や技術から得られる成果は大きいのではないでしょうか。

* 現名称「Desktop Imager 2 DE」

 


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