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ライフサイエンス 2024.01.11

【Micaを知る- vol.2】3D組織イメージング:One-Clickで高速Overview画像から高解像度画像まで

はじめに

世界初のMicrohub「Mica」は、3D画像取得とAIによる数値解析(定量化)を1台で実現します。
3D組織イメージングは、ライフサイエンスにおいて広く普及しています。組織の組成や詳細な情報を明らかにするため、仮説から結論を出すため、あるいは健康な人とそうでない人を比較するために、使用します。この記事では、LeicaのMicaが3D組織イメージングをどのようにサポートしているかをご紹介します。

 

3D組織イメージングとは?

モデル生物や患者さんの組織切片を用いて、組織の形態から細胞の形態までを解析します。これにより、健常者と非健常者の違いや、コントロールと治療の違いを明らかにすることができます。例えば、特定の細胞の有無やその形態(形状、体積、長さ、面積など)は、情報量の多いパラメータとなります。
蛍光顕微鏡は、特異的に標識された細胞や細胞成分の同定に役立ちます。そのため、遺伝子組み換え体や免疫蛍光染色が使用されます。さらに、蛍光 in situハイブリダイゼーション(FISH)により、特定の遺伝子や転写物の発現を可視化することができます。3D組織イメージングの一例として、脳の神経細胞の画像取得をし、長さ、体積、他の細胞とのコネクションを定義づけることができます。虚血を患ったモデル生物から脳切片を作成し、形態の違いや細胞数を把握することが目的とされることもあります。

 

課題

1)顕微鏡上でサンプルの全体像を把握する
ステージにセットされたサンプルの全体を撮像するには、3Dでの駆動が必要となります。ピントを合わせたり、適切な領域を視野に合わせたり、隣接領域を順に画像取得するなど、大変煩雑な工程となります。一方MicaのSample Finderは、サンプルにピントを合わせ各領域を低倍率で観察しながら、このプロセスを自動化することで一連のワークフローを通して全体像把握に使用することができます。

2)画像取得パラメーターの設定
必要以上に励起光を照射すること無く、興味のあるシグナルのみを可視化することが肝要です。通常、励起と蛍光両方のパラメータ設定をする必要がありますが、Micaでは「Live」ボタンをクリックするだけで、蛍光の可視化に必要なすべてのパラメータを自動設定された画像を表示することができます。また、その時点での最適な条件は「OneTouch」ボタンをクリックするだけで調整することも可能です。従来、顕微鏡の観察条件を変更するには、各パラメータがトレードオフの関係にあることを知った上で考慮する必要がありますが、自動設定をしてくれるMicaでは、蛍光観察の習熟度に関係なく適切な画像を得ることができます。

3)観察領域を正しく見つけ出す
顕微鏡観察のワークフローの最初のステップで必要となる観察領域の視野出しでは、接眼レンズを介して行う場合、個々の位置を記憶しておく必要があります。また、デジタルマイクロスコープを使う場合には、サンプルの全体像を比較的簡単に把握することができますが、それでもなお、画像内のどの位置で撮影を行うかを指定する必要があり煩雑です。一方、Micaではナビゲーターツールを使って、これを簡単に行うことができます。 低倍率や高倍率でサンプルのOverview像を表示することで、興味深い位置を見つけることができるのです。さらに画像上に描画することで、サンプル上のROIを直接マークすることができ、これによりその後の高解像度撮影の範囲を維持することができます。

4)対物レンズ補正間の調整作業
高倍率の観察では液浸タイプの対物レンズを使用することがしばしばあります。水とオイルの使用が最も一般的で、水溶液中のサンプルには水浸対物レンズを、封入されたサンプルには油浸対物レンズを使用することが光学的に最適と言えます。
Micaは、水浸、油浸、両方のアプリケーションを満たすことが可能です。水浸対物レンズには自動水供給機能が備わっています。また、光学的品質をさらに高めるため、サンプル厚を補正する補正環を備えているものもあります。MicaにはSmartCORR機能があり、自動で補正環のポジションを最適化することができるのです。

5)組織切片の厚みへのチャレンジ
厚みのある組織標本は、対象とするシグナルを妨害する迷光を顕著にもたらします。THUNDERでは、バックグラウンドの蛍光ボケを減らすことができるComputational Clearing技術を備えています。MicaはこのTHUNDERをシステムに組み込んでおり、観察対象領域を短時間でクリアに画像取得することを可能にするのです。

6)共焦点観察の使い勝手の悪さ
THUNDERのような画像演算の手法の他に、共焦点顕微鏡も厚みのある組織切片の画像化の手段の一つです。しばしば、この装置の導入のしやすさと使い勝手の良さが課題となります。共焦点顕微鏡は、その高度な技術を踏襲していることが原因で、使用にあたり長時間のトレーニングが必要とされます。一方、共焦点顕微鏡と蛍光顕微鏡顕微鏡を1つに統合したMicaは、画像取得に必要なパラメーター設定の作業を最小限に抑え、トレーニングに掛かる時間を減らし、必要なスキルレベルを下げることができます。さらに、共焦点モードと蛍光観察モードの両方で、同じインターフェースを使って画像設定を行うことができます。したがって、それぞれのシステムについて操作方法をトレーニングする必要がありません。また、視野を変えることなく、共焦点観察と蛍光観察を切り替えることができます。ライフサイエンスの実験系では、試料や結果への影響を正確に把握するために、できるだけ条件を変えないことが重要です。Micaはパラメーターを一定に保つことも変更することも可能であり、参照画像から簡単に復元することもできます。

 

方法

本記事では、 3枚のラット脳組織切片(250μm厚)を、スライドをスライドホルダー(図1)にはめ込みステージに装着して画像を取得しました。

蛍光標識;核 (DAPI、マゼンタ)、神経細胞(GFP、シアン色)、アストロサイト(GFAP-DsRed、赤色)

図1:組織切片スライド用Mica専用スライドホルダー

 

サンプルの情報として、カバースリップの形状や染色などの基本情報をあらかじめ登録します。Sample Finderはこれらの情報をもとにカバースリップを識別し、低倍率のOverview像を自動的に撮影します。またその後、NavigatorのMagicWandツールで3つの組織切片を識別します(図2)。本記事のここでの特定領域に関する画像取得のパラメータは、自動的に設定され画像取得されました。また同視野においてより微細な観察をするため、シームレスに共焦点モードに切り替え、3Dボリュームを含む高解像度画像を取得しました。zスタック情報の設定には、z-Range Finderを使用し、開始と終了を自動的に登録しました。画像取得後、「Learn & Results」ツールから、Pixel Classifierを使用して樹状突起のスパインを測定、Maximum Projectionを使用しスパインを識別しました。PixelClassifierは、描画ツールでオブジェクトの例(この場合はスパイン)にのみラベルを付けるだけですので、使いやすく強力なツールとなります。Learningを経て、画像内の残りの分類結果も提供されました。

 

結果

図2:Overvire像で全体像をとらえたのち、Magic Wandツールで領域を選択した。

 

Micaの蛍光4色同時取得では、フィルターキューブベースの顕微鏡システムと比較して、ユーザーの時間を節約することができました。また、タイルスキャンの中から興味深い領域を見出せたため、共焦点モードでより高倍率・高精細に画像取得し、さらに詳細を明らかにすることにしました。より詳細な情報を得られる3Dデータを取得するため、z-interfaceで深さ情報を定義しました。共焦点モードで深さ120μmの領域を画像取得した後、3D-Viewerでデータを可視化し、脳サンプルの空間情報を獲得しました(図3)。

図3:3D再構築した組織切片の共焦点画像。細胞間結合など、より詳細な空間情報を得ることができる。

 

定量化のために、画像データのMaximumProjectionを作成し、樹状突起スパインの平均面積を測定しました。Pixel Classifierがスパインを識別し、解析ツールがその面積を決定しました。値をプロットすることで、データと相関を視覚化することができます。図4は、樹状突起スパインの大きさのヒストグラムを示しています。

図4:Micaは画像を取得するだけでなく、画像を分析することも可能。AIベースのPixel Classifierを使用して関連する画像の詳細を特定し、その後それらオブジェクトを数値化しグラフで表示することができる。この例では、樹状突起の平均面積がMaximumProjectionで測定された。

 

結論

Micaは、3D組織イメージングに役立つツールです。Sample Finder機能により、ユーザーは素早くサンプルにアクセスし、全体像を得て、次のアクションを容易に定義することができます。
その後、Navigatorビューで組織セクションをより深く掘り下げることができます。ROIを素早く定義するMagic Wandや最大4チャンネルの同時撮影などにより、タイルスキャンの工程をスピードアップします。3D画像取得は、新しいz-interfaceで簡素化され、解析はPixelClassifierがサポートします。
Micaは、蛍光観察モードと共焦点モードを1つのシステムで実現します。これにより、Overviewから詳細な3Dイメージングと解析まで、ワークフロー全体を1つのシステムで実行することができるのです。

 

参考文献

1)Leica Microsystems: Efficient Long-term Time-lapse Microscopy, Science Lab (2022)

論文全文はこちら

 

関連動画

1)組織標本の透過観察と蛍光観察を、1台のシステムで画像化するには?
MicaCam Episode10

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