品質を保証するだけが目的ではない
ISO16232 は、前身となったドイツ自動車工業会規格 VDA19 と共に、国際標準となっている「自動車部品の清浄度管理」に関する規格です。2002 年にドイツ自動車工業会規格 VDA19 が、そして、2007年に ISO16232 が発行されて以来、 国際規格である ISO16232/VDA19 の品質要求に準拠した異物粒子の計測・組成分析が必須となりました。自動車業界で利用されるエンジンやトランスミッションなどを構成する流体部品、そしてリチウムイオンバッテリや電子部品に至るまで、ありとあらゆる部品に「クリーンであること」が求められてるのです。
世界標準 ISO/VDA が担う役割
工業部品の製造プロセスはさまざまな汚染・コンタミネーション(コンタミ)との戦いです。目視では確認できないほど小さな異物であっても、機械の誤作動を引き起こしたり、システムの寿命や品質への信頼性を左右することがあるため見逃すことはできません。ISO16232/VDA19 は、さまざまな理由から目視検査に適さない、または目視検査が難しい部品に発生した汚染物質を、適切に検出するために定められた規格です。 ISO は、製品の品質や安全性の確保、組み立て工程における異物の効率的な管理に役立つだけでなく、製造物の取引を円滑化する役割も担っています。製造を行う国々の間で基準がバラバラだと、基準の甘いある国では販売可能な製品が、基準の厳しい別の国では販売できないということが起こってしまうからです。 これに対して VDA は、ISO のように世界的に共通する規格として掲げられるものではなく、自動車に特化した規格です。ドイツ自動車工業会による規格で、ヨーロッパ、特にドイツの自動車工業で活動する会社などはこの規格に適合することが求められます。 ISO16232 や VDA19 は、こういった国際的な規格のなかでも個別具体的な検査を要する規格とされており、ISO16232/VDA19 の定める清浄度規格に準拠するには、部品の清浄度「クリンリネス」を調べるための異物解析を行なわなくてははなりません。このことを「コンタミネーション解析」と言います(「コンタミ解析」や単に「コンタミ」と呼ぶこともあります)。
企業におけるISOやVDAの重要性
グローバル化が進む昨今では、多くの企業において国際認証の重要性が増しています。また、製品の品質を国内外へアピールするためにも国際認証の取得は非常に重要です。しかし、「なぜ統一規格が必要なのか」という問題意識を持たないまま、認証を得ることだけを目的にしてしまうと、認証取得への労力だけ増え、現状の改善が得られないという事態も起こりかねません。 ISO の取得をきっかけに、問題意識を持ち、課題の自己認識と向上心の保持を心掛ることで、ISO の取得は必ず意味のあるものとなることでしょう。
コンタミネーション解析の流れ
異物解析では、自動車のなかでもエンジンのような重要な機能を持つ部位を調べていくことになります。しかしエンジンをまるごと検査していくわけではなく、一度組み立てをしてしまうと内部を検査することが難しい、構成パーツ一つひとつに着目していきます。 まずは部品の表面から異物を落とし、フィルタにかけて異物のみを集めていきます。その後顕微鏡を使い、どのような異物であったのか、粒子の数やサイズ、また金属・非金属の分類などを解析し、その異物が自動車にとって危険因子となり得るのかどうかを詳しく調査します。 ISO16232/VDA19は、異物解析を行う際の解析方法や判断基準に関する多くの規定を設けており、解析が必要な粒子の最小サイズや、自動測定における画素数の指定、異物の抽出方法など、さまざまな基準が定められています。数 ㎛ の粒子を調査するには顕微鏡を用いることになりますが、解析した結果はそれぞれの規格に沿ったフォーマットでレポーティングしなければなりません。 最新の国際規格に準拠したレポートの作成には、ライカの異物解析ソフトウェア Cleanliness Expert がおすすめです。ISO16232 や VDA19 といった国際規格準拠のレポートはもちろん、お客様お一人おひとりのニーズに合わせて、結果の出力方法をカスタマイズすることも可能です。
Cleanliness Expert で異物解析のワークフローを構築する
異物解析のワークフローを構築する際に重視したいのは、作業効率。いかにスムーズに検査を行えるかが生産性に直結するため、Cleanliness Expert のように複数サンプルの測定を同時に行うことができるシステムは、効率アップに欠かせません。粒子の種類に合わせて、フィルタごとの計測パラメータを設定すれば、解析プロセスを自動化することができます。 さらに、顕微鏡でフィルタを観察しながら、化学組成を調べることができたとしたら? Cleanliness Expert なら、ライカの革新的な顕微鏡 Leica DM6 M LIBS と組み合わせることで、そんな驚くべきソリューションを実現することができます。 Leica DM6 M LIBS は、マイクロプラズマを用いた高速な化学分析手法ーLIBS(レーザー誘起ブレークダウン分光法)機能を搭載したまったく新しい顕微鏡システムです。その LIBS 顕微鏡 に Cleanliness Expert を組み合わせて活用すると、一つのシステムで目視検査と化学試験を行うことができるようになり、飛躍的な効率アップが期待できるのです。電子顕微鏡観察のための移動や試料作製の手間を大幅に削減し、その場で、意思決定に必要なデータを取得することができるようになります。
さまざまなツールを活用して ISO16232/VDA19 に対応する
ISO や VDA などの世界基準は、世界貿易の発展と、質・信頼性の高い製品やサービスの創出、そして生産性の向上を支援するために定められた規定です。実際に、部品の小型化と精密性の向上がますます求められる時代においては、汚染物質の管理手法も日に日に難易度を増しており、高性能顕微鏡や最新の解析ソフトウェアを上手く活用して国際基準に沿ったワークフローを構築することは、生産性アップへの近道と言えるでしょう。
- 異物解析ソフトウェア
- Cleanliness Expert
Cleanliness Expert は、生産性の高い、シンプルでスムーズな異物解析ワークフローを実現する異物解析ソフトウェアです。ISO16232/VDA19 といった国際規格準拠のレポート作成はもちろん、お客様お一人おひとりのニーズに合わせて、結果の出力方法をカスタマイズすることも可能です。効率アップに欠かせない複数サンプルの同時測定機能搭載。さらに、顕微鏡観察をしながら、化学組成を調べることもできる!? 驚くべきソリューション。
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ものづくり・ライフサイエンス・医療、どの現場においても、顕微鏡を使う人々が見つめているのは、わたし達一人ひとりの未来そのものです。すこやかで心地よい暮らしをつくる社会の一員として、顕微鏡の歴史をつなぎ、ビジネスを成長させながら未来を想うことが、顕微鏡メーカーとしての使命だとライカは考えます。
触れて・学んで・楽しい―顕微鏡のライカ 体験ラボ 顕微鏡のライカ 本社1階の体験ラボでは、さまざまなワークショップ/セミナーを開催しています。顕微鏡選びでお悩みの方、また、いつもの試料でライカ顕微鏡の性能と操作性を試してみたい方は、お気軽にご連絡ください。