求められるコストダウンと人員削減
「ジャパンクオリティ」という言葉が高品質を意味するほどに日本の製造業は長年研鑽を重ね、製品のクオリティを上げてきました。しかし多くの研究者や職人たちの経験や発想によってもたらされた、世界トップレベルの地位に今陰りが見え始めています。海外の製造現場が技術革新と豊富な人材を背景に、「ジャパンクオリティ」の強力なライバルとなったのです。今、日本では製品の品質改善のための取り組みが求められています。
品質に関する考え方の変化と総合的品質管理への取り組み
良い製品を作ることが、企業の命題です。かつては良い製品とは耐久性や機能性に優れたものを指し、それを追求することがマーケティングであるとされていました。しかし、マーケットが広がり、製品が多様化していく中で、製品における品質とは耐久性や機能性に優れているという単純なものではなくなりました。現代における製品の品質とは、サービスやアフターフォローも含めた、消費者にもたらされる価値そのものになったのです。その製品で何ができるか、ということではなく、その商品によって、消費者に何がもたらされるか、が現代における品質なのです。 この品質に対する考え方の変化は、「商品の品質を維持するためには、検査を厳しくすれば良い」という旧来のスタイルに限界をもたらしました。現在では多くの企業が、総合的品質管理 (トータル・クオリティ・マネジメント:TQM)に取り組むようになりました。 総合的品質管理(トータル・クオリティ・マネジメント:TQM)とは、製造部門だけではなく、組織全体で品質と生産性を向上のための取り組みをするという管理方法を指します。付随するサービスも含めたトータルの品質向上のため、製造部門だけではなく、企画、販売、サービス、さらには人事や経営戦略にまで品質向上への取り組みが求められるようになったのです。
世界的な競争激化が品質に与える影響
しかし中には、コスト削減に対する市場からのプレッシャーと、人材不足から、総合的品質管理が立ち行かなくなっている企業もあります。 世界的な技術レベルの向上と合わせ、豊富な労働人口を背景に安価な商品を製造する国が増えてきました。これにより、今まで以上にコスト削減が求められるようになりました。また、優秀な人材の取り合いは国内だけの争いではなく、世界各国の企業が相手となりました。開発・製造・検査といったさまざまな場で、人材の不足が叫ばれるようになったのです。 今も品質改善に余念のない企業は多数ありますが、コストダウンと人員削減による人手不足が、品質向上に取り組まず検査に注力する製造現場や、顧客満足を考えずセールスに傾倒する販売部門など、総合的品質管理とはかけ離れた組織体制を生み出す原因となってしまっているのです。
解決策はプロセスへの科学的アプローチと効率化
ともすれば、製品のみに着目した、旧来の品質管理(クオリティ・コントロール)に陥ってしまいがちな製造現場。そこに今求められているのが、科学的なアプローチと効率化です。研究・開発・製造の現場に、より操作性や精度の高い機器を導入することや、IOT(Internet of Things、物のインターネット)、AI(Artificial intelligence、人工知能)の活用などで、従事する作業員の経験の不足を補い、人材不足への解決策とするのです。 例えば、年間約8隻の化学薬品タンカーを建造する福岡造船は現場作業員が拡張現実(AR)技術を使うことにより、部品の種類や取り付け位置などを効率的に確かめられるようにしています。部品に付けられたARマーカーを読み取ることで、効率的に部品の取り付け位置などが確認できます。部品を膨大な設計図と照らし合わせる作業は経験の有無によって効率が変わります。作業員ごとの経験値の差を最新のAR技術で補完することで効率が改善されます。福岡造船では約35%の工数削減を目指しています。 自動車部品・電子部品・精密機器などの製造現場の研究・開発、品質管理で、分析・計測・評価の第一歩は「見ること」から始まります。「見落とさないこと」が重要なファクターとなる品質管理の現場では、「高画質の画像を素早く取得できるデジタルマイクロスコープ」Leica DVM6 がスムーズな分析・計測・評価に貢献しています。デジタルマイクロスコープ Leica DVM6 は、従来のデジタルマイクロスコープに比べ、画像の色・立体感などを忠実に再現し、簡単な操作で観察と測定を可能にしています。マイクロスコープ・カメラ・照明の設定条件が自動保存され、データとして蓄積されるので、作業者の経験の有無にかかわらず再現性のある結果が得られます。 AIの活用では、自動車関連や建材メーカー、素材メーカーなどでNECの外観検査ソリューション「AI Visual Inspection」の導入が進んでいます。AIを活用した検品のシステムです。製品を撮影したデータをもとに、製造された製品の検品を行うことができます。1つの製品を数秒で、しかも安くことなく検品できるため、作業効率が良く、また、経験による検査レベルのむらがないため品質の向上に寄与しています。 他にもクラウドを利用したデータ共有により、大規模なデータを素早く各部門で共有することで、販売を含めた各部門からのフィードバックが素早く共有できるシステムを構築している例などもあります。 世界的に競争の激化した現代において、経験者の育成に時間をかけることは難しくなってきました。また、無理な人員増や、単純な人件費削減によるコスト抑制策が大きな品質問題に直面する事例も多く出ています。 新たな技術やテクノロジーの導入が、コスト削減や人材不足に対する解決策、ひいてはクオリティ向上への有効な一手となりうるのです。
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