顕微鏡の対物レンズの選択は、限られたコストでより良い画像を得るための重要な要素となります。得たい画像に応じて、対物レンズのグレードを選択することも必要です。
対物レンズのグレードは、大きく2つの補正レベル基準で分類されています。
色収差の補正レベルによるグレード分類
分類の1つ目は、色収差の補正レベルによるグレードの違いです。色収差とは、光の波長(色)の違いによって屈折率が異なり、結像位置も異なってくる現象のことです。波長が短い光の方が、レンズを通過した光の結像位置は短くなります。
「色収差」も、特性が異なる凸レンズや凹レンズを組み合わせることで補正ができます。主に「アクロマート」と「アポクロマート」に分類されます。
アクロマート:赤・青を補正
アクロマート(achromat)は、赤・青の2波長の色収差を補正します。
※正確には、光の基準波長546nm(緑)を中心に、644nm(赤)~500nm(青)の色収差を補正。
「否定」を意味する「A」+「色」を意味する「chromat」で、「色収差を消す」を意味する「achromat」となります。
一般的な顕微観察に用いられていますが、単純な構成でガラスの歪みの影響が小さいという特性があるので、偏光観察には最も適したレンズといえるでしょう。
アポクロマート:赤・青・緑を補正
アポクロマート(apochromat)は、赤・青・緑の3波長の色収差を補正します。
※正確には、アクロマート補正の波長644nm(赤)~500nm(青)に加えて、436nm(紫)までの可視光の波長域全体の色収差を補正。
ここで、アポクロマートについて詳しくご紹介しましょう。
赤・青・緑は「光の三原色」ですが、通常のレンズを通る光は、赤・青・緑で焦点を結ぶ位置が異なります。これを「軸上色収差」といいます。
アポクロマートレンズは、この赤・青・緑(光の三原色)のすべてを補正します。色のにじみを除去できるので、研究用途の観察などに有効です。
面湾曲の補正レベルによるグレード分類
もう一つの分類は、面湾曲の補正レベルによるグレードの違いです。補正機能のあるレンズは「プラン」に分類されます。
プラン:像面の湾曲を補正
プラン(plan)は、観察範囲全域に渡って像面湾曲が補正されている対物レンズです。
通常のレンズでは、画像の中央にピントを合わせると、周辺のピントがぼやける等の像面湾曲が発生してしまいます。
プランレンズは、この像面湾曲を補正する機能を有しているため、全体的にピントが合った状態の画像を得られます。
ライカの対物レンズのグレード
一般的に、最高級の対物レンズは「プランアポクロマート」、試料に応じては「プランアクロマート」、低価格の普及用対物レンズは「アクロマート」として設計されています。