• Facebook
  • Twitter
  • Share
  • Share
ライフサイエンス 2015.11.24

超解像顕微鏡観察事例/タウタンパク質の突然変異とアルツハイマー病の関係

老人性認知症の発症メカニズムの解明に挑戦

世界の認知症患者数は、現在 約4680万人と推定され、2050年には3倍の1億3200万人に達する見込みであると、2015年8月国際アルツハイマー病協会が報じました。このような状況の中、アルツハイマー病発症のメカニズムを解き明かし、治療への道を発見する研究は早急な発展が望まれています。脳の老化、アルツハイマー病発症のメカニズム解明をテーマに研究されている、同志社大学 宮坂知宏先生にお話しを伺いました。

 

アルツハイマー病発症のカギを握る「タウ」とは?

アルツハイマー病と認定されるには、アミロイドβとタウという2つのタンパク質の蓄積が確認されることが必要です。「これらは、時間をかけてゆっくり蓄積することによって発症します。先にアミロイドβが溜まり、その後にタウが溜まります。タウが溜まると同時に神経の機能が落ちていく、神経細胞死が起こってきます。イメージでいうとアミロイドβが病気になる土壌を作る、最後に神経細胞を殺すのがタウなのではと考えられています。このタウの異常蓄積を原因とする神経変性疾患を総称して、タウオパチーと呼ばれます。」宮坂先生は、このタウタンパク質の研究により、タウオパチーの発症メカニズムの解明に取り組んでいます。「今までは、アミロイドβの研究が主流でした。ここ10年くらいで、タウの研究が発展してきて、次々と新しい論文が発表されています。今、非常にホットな研究と言えるのではないでしょうか。」 タウは、中枢神経細胞に多く存在し、脳神経機能に必須のタンパク質です。「アミロイドβは、もともとはそれほど脳内にないタンパク質で、それが作りすぎになるのか、壊されにくくなるのかが原因で脳内に蓄積するようになります。一方、タウはずっと脳神経細胞にいます。それがなにかの原因で、突然悪さをしだす。なにがそのきっかけになるのかを解明するのが、私の研究です。」

 

タウの正体を明らかにする、超解像顕微鏡

タウの突然変異の原因を解明するためには、まずタウを正確に知る必要があります。「正常な時はタウはどういう状態で、それがどうやって病気の形に変化していくのかを組織学的に捉えたく、超解像顕微鏡を検討しました。ライカの超解像顕微鏡のデモは、圧巻でした。神経の束が一本一本はっきり見える。今までは、微小管の上にべたっとタウが乗っていると思っていたのですが、超解像顕微鏡ではどのようにタウがくっついるのかがはっきり見えて、タウの配置には規則性があることがわかった。これには本当に驚きで大感動でした。」宮坂先生は、興奮気味にライカ超解像顕微鏡の「見え」の素晴らしさを語られます。「この超解像顕微鏡で、タウの通常の状態が可視化できたので、ここからどうやって病気の状態になるよう動くかですね。タウがこうなったら、神経細胞にこういうダメージがあるとかがわかってくると思います。」

 

超解像顕微鏡
TCS SP8 STED 3X

超解像技術の革新者であるライカが実現する、驚くほど簡単で、驚異的な超解像イメージング。光学分解能を超える80nmの超解像イメージングが可能です。STEDレーザーラインは、592nm/660nmの2つから選択可能です。

ライカ TCS SP8 STED 3X
同志社大学 生命医科学部 医生命システム学科 神経病理学 准教授
宮坂 知宏先生

日本大学薬学部卒、北海道大学大学院薬学研究科修士課程修了、北海道大学大学院医学研究科博士課程修了。博士(医学)。理化学研究所研究員、東京大学助手を経て2007年度より現職。

同志社大学 宮坂 知宏先生

この記事をシェアする

お問い合わせ・サポート

不明点・ご質問は、お気軽にお問い合わせください。