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ライフサイエンス 2025.03.27

【THUNDER×Neuroscience_vol.1】感覚ニューロンの高速・高コントラスト3Dイメージング

本稿では、THUNDER Imager Tissueを用いた後根神経節(DRG; Dorsal Root Ganglion)組織の高速・高コントラスト3Dイメージングが、LVCC(large volume computational clearing)を用いることで、従来の蛍光顕微鏡観察と比較して、感覚ニューロンをより鮮明に解像できることをご説明します。 神経科学の分野では、触覚や痛覚への感覚ニューロンの関与に焦点を当てた研究が主となります。 この現象をよりよく理解することは、神経系の疾患や治療法の開発に重要な意味を持つと言えます。

 

はじめに

触覚と痛覚における感覚ニューロンの多様性とその役割を明らかにすることは、末梢神経系の一般的な疾患である末梢神経障害を診断・治療する上で重要である[1,2]。 感覚障害、慢性疼痛、感覚ニューロンの病理学的変化の関連を理解することは、神経系の機能障害を改善することを目的とした新しい疼痛治療法の開発に役立つ可能性がある。 今回報告された結果は、THUNDERイメージャーを用いた感覚ニューロンの迅速で高コントラストな3Dイメージングが、研究者が神経障害に関する洞察を得る上でどのように役立つかを示すものである。

 

課題

厚い神経節組織の高コントラストイメージングを迅速に実現し、標本の細部を明瞭に解像できるソリューションは、神経障害研究にとって重要である。 従来の蛍光顕微鏡は、ハイスピードと高い検出感度を提供するが、厚い組織のフォーカス面以外からのシグナルにより、しばしば画像にピンぼけやかすみが生じ、画像のコントラストを著しく低下させてしまう[3,4]。

 

方法

感覚神経の一部で tdTomato(赤)を発現する遺伝子組み換えマウスから、後根神経節(DRG)の組織標本を作製した。パラホルムアルデヒドで固定し、厚さ20μmの凍結切片を抗mCherry一次抗体で一昼夜染色し、その後Cy3標識二次抗体で染色し、Fluoromount Gで封入した。 バックグラウンドに見られる神経細胞の自家蛍光は、GFPフィルターで検出された。THUNDER Imager Tissue およびLarge Volume Computational Clearing(LVCC)[3,4]を適用し、3Dのz-スタック画像を取得した。2Dに投影した画像は、LAS X Extended Depth of Field (EDOF)処理ツールを使用して作成した。

 

結果

THUNDER Imagerで取得した神経節組織標本の画像を図1に示す。

図1:感覚ニューロンの一部にtdTomato(赤)を発現するマウス後根神経節の従来の蛍光画像(A)とTHUNDER画像(B)。 画像提供:米国ウィスコンシン大学マディソン校獣医学部病理生物科学科LaTasha K. Crawford博士。

【図1】感覚ニューロンの一部にtdTomato(赤)を発現するマウス後根神経節の従来の蛍光画像(A)とTHUNDER画像(B)。 画像提供:米国ウィスコンシン大学マディソン校獣医学部病理生物科学科LaTasha K. Crawford博士。

 

結論

THUNDER Imager Tissueとlarge volume computational clearing (LVCC)は、ピンぼけを除去することにより、マウス組織の蛍光画像を明瞭にし、後根神経節の微細な構造詳細を明らかにすることができる。

 

参考文献

  1. L.K. Crawford, M.J. Caterina, Functional Anatomy of the Sensory Nervous System: Updates From the Neuroscience Bench, Toxicologic Pathology (2020) vol. 48, iss. 1, pp. 174-189, DOI: 10.1177/0192623319869011.
  2. E.L. Tran, L.K. Crawford, Revisiting PNS Plasticity: How Uninjured Sensory Afferents Promote Neuropathic Pain, Front. Cell. Neurosci. (2020) vol. 14, DOI: 10.3389/fncel.2020.612982.
  3. J. Schumacher, L. Bertrand, THUNDER Technology Note: THUNDER Imagers: How Do They Really Work? Science Lab (2019) Leica Microsystems.
  4. L. Felts, V. Kohli, J.M. Marr, J. Schumacher, O. Schlicker, An Introduction to Computational Clearing: A New Method to Remove Out-of-Focus Blur, Science Lab (2020) Leica Microsystems.

 

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