「眼科サージャンサロン」写真左から埼玉医科大学病院 教授 篠田 啓先生(ファシリテーター)、 MIE眼科四日市統括院長 大澤 俊介先生、はんがい眼科 副院長 倉員 敏明先生、埼玉医科大学病院 医局長 渋谷 雅之先生、中村眼科医院 院長 中村 竜大先生
5人の現役眼科サージャンによる意見交換会
眼科手術のプロフェッショナル5名にお集まりいただき、手術顕微鏡に求められる性能や役割について、座談会形式の意見交換会を開催致しました。その全容をご覧ください! PDF版のダウンロードはこちら
ファシリテーター 埼玉医科大学病院 教授 篠田 啓先生より
ライカの眼科手術顕微鏡「Proveo 8 を徹底解明する」というテーマで、Proveo 8 の光学系と拡張性、そして、眼科手術の未来と顕微鏡が担う役割について、光学性能や顕微鏡システムに精通した4人の先生方にお集まりいただき意見交換を行いました。 Proveo 8 のコンセプトは、やはり、その光学系に詰まっていると感じます。いかにたくさんの光を術者に届けるか、というところが非常に工夫されている。顕微鏡がとにかく明るい。明るいことで術者にも患者様にも優しい。そこにライカのこだわりを感じます。今回は、Proveo 8 だから出来ること、Proveo 8 でなければ気が付かなかった発見、こだわりなど、実際の使用感も含めた貴重なご意見を数多くお聞きすることが出来ました。
「患者さんがどこを見てても確実に徹照するでしょ、すごくないですか。」
誰かに教えたくなる!Proveo 8 の「徹照にこだわった」照明系
篠田 はじめに、顕微鏡の明るさと安全性という点から。Proveo 8 は、「明るい顕微鏡」と表現されることが多いですが、どんな時にそれを実感しますか?
大澤 Proveo 8 って、もう、どんな角度でも徹照するじゃないですか。あれはすごいよね。患者さんが少々右を見ていようが、上を見ていようが、確実に徹照する。Proveo 8 を使ってる時はもう、そのままやりますよ、患者さんがどこ見てても。支障はないので。
篠田 同軸0°照明が4つもついている、ということがポイントのようですね。同軸0°照明は、最近の主流になっていますけど、他社の顕微鏡では、全ての照明が0°ということはあまり無いと思うんです。0°の照明で徹照させつつ、少し角度をつけた斜照明を併用しながら立体感も出す、といったことをしている。一方 Proveo 8 は、あえて徹照にこだわって、全ての照明を同軸0°にしていますよね。だから、目が動いても、横に座っても、何をしても、しっかりと反射が返ってくると。
中村 硬い核とか、濁ってるときでも、すごい徹照しますよ。
倉員 難易度の低い白内障や、CCC(前嚢切開)に限った話であれば、若い先生なんかも、顕微鏡による違いは特に感じないかもしれません。でも、後嚢混濁が強くなったり、成熟白内障だったりと、徹照がきちんと得られないような症例をやり始めた時に、違いに気がつくと思うんです。
大澤 硝子体出血とかね。
倉員 そう。Proveo 8 ってね、ちょっと目の角度を変えると、前嚢面が見えるんです。前嚢面からの反射に気がつき、前嚢を面で認識できるようになる。だから、Proveo 8 を使っている人は、従来の完全徹照系の顕微鏡のように、前嚢切開ラインの影を見ているだけでなく、前嚢そのものを空間的かつ立体的に認識して切開していると言えるわけです。顕微鏡によって、前嚢切開のコンセプトが、それくらい変わるんですよね。難しい症例では、前嚢の位置をちゃんと確認する必要がありますし、この前嚢切開のやり方は、将来、内境界膜剥離や黄斑前膜の手術にも役立つと考えます。若いうちから、前嚢切開ラインの影だけを見るのではなく前嚢そのものを見る癖をつけたいですね。
篠田 ただ立体感についてはどうなんでしょうか?これまでは、立体感を出すのは斜照明の役割りというのが1つの考え方だったし、斜照明には角度がついているのが当たり前でした。そういった意味では、Proveo 8 には従来型の斜照明が無いわけですけど、立体感が失われてしまったといったことは無いですか?
倉員 同軸0°であっても、LED の拡散光でシャドーコントラストを得ることはできますよ。工業顕微鏡の分野で良く使われる、同軸拡散照明法と似たような原理でしょうか。真っ直ぐ落とすんだけど、色んな方向から当てる、というイメージ。右目と左目の光路から、中心に向かって落射させるので、同軸光でありながらも影がしっかり出るような設計になっている。
大澤 Proveo 8 は、右目と左目の光路の間隔が 24mm もありますから、すごく広いんですよ。光路幅とか、ステレオベースなんて言いますけど。理論的には、それが広いほうが、シャドーコントラストがより強調されて立体感も得やすい、ということになります。影を出す照明という意味では、4つ全部が斜照明の役割りも持っていると言えるんじゃないでしょうか。メイン照明の方は、他の3つよりかなり大きくて、広く照らせますしね。
自分流に使いこなす
篠田 徹照照明が3つと、メイン照明で合計4個。徹照照明とメイン照明は、それぞれ別々にコントロールできるらしくて、あらかじめ設定しておけば、術中にフットスイッチで切り替えられる、と。コンビネーションモードっていう機能なんですが、皆さん使われてますか?
倉員 僕は使ってますよ。いくつか登録できるので、使用場面に合わせて何パターンか使い分けています。僕は、硝子体に入る前に徹照照明を消しちゃうので、その時の設定がひとつ。硝子体が始まったあとは、メイン照明で視野全体を明るくして、結膜とかを見やすい状態にしてやります。縫ったりする時は広く照らせた方が良いな、とか、状況に合わせて。
中村 僕も最近使ってます。結膜の時になったら暗めの設定に切り替えて、白内障の時だけ明るく。照明を切り替えてあげたほうが患者さんにも優しい。
篠田 例えば、ちょっと反射が眩しいから照明を変えたいなっていう時なんかも、フットスイッチでポンポンと切り替えられるわけですよね?
倉員 そうです。反射が眩しい場合とかって、メイン照明を調整してあげることが大事だったりしますよね。そっちを下げてあげると、違和感が消えることがあります。あと、緑内障術者なんかだと、白内障用の完全同軸照明ではすごくやりにくいと思うので、切り替えた方が良いでしょうね。
大澤 Proveo 8 で反射が眩しすぎるっておっしゃる方は、明るくし過ぎてしまっているケースも多いんですよ。Proveo 8 って、普段より光を抑えても全然徹照しますし、ものすごく見やすいですから、そこを理解してもらうことがすごく大事。
倉員 顕微鏡が明るすぎると、結膜からの反射や溜まった水からの反射で光が散乱して見えにくくなってしまいます。
中村 明るすぎると、目が疲れるっていう意見も聞きますね。ただ、それって、明るさよりも、視度調整やピント合わせの甘さが原因だったりするんですよ。実は僕も、最初に Proveo 8 を使った時はすごく疲れたんです。その時もやっぱり調整がきちんと出来てなかったです。後からモニターで確認したら、かなりピンぼけした状態で手術してた。Proveo 8 って焦点深度がすごく深くて、解像度と立体感のバランスも良いので、それでも手術に支障が無いくらい綺麗に見えちゃうんですよね。それに気づいてちゃんと設定するようになってからは、一気に疲れなくなりましたよ。最近の顕微鏡って、LED の明るさを抑えて、黄色く柔らかい色味に見せるためのフィルタが入ってるじゃないですか、僕なんか、それ2枚とも抜いちゃいましたから。最初は白くて明るいなって感じましたけど、すぐ慣れちゃいました。
倉員 逆に、僕なんかは白い色が苦手なんですね。ずっと黄色いのでやってきているから。人間の脳って、やっぱり慣れたものに対する心地よさみたいなものがあると思うので、初めて Proveo 8 を試すという方は、まずは、光量や色合いを自分の好みの設定に持っていく、というふうに調整してみると良いと思います。
大澤 設定を作り込んでいくっていうのは大事ですよね。照明の設定に限った話では無いですが、顕微鏡によって、他の機器との相性も違いますから。NGENUITY を使い出すと、例えば Proveo 8 とコンステだったらこのモード、EVAだったらこうっていうのを全部作りこんでいかないと、期待したような見え方はしてくれないですし。
ポイント
- 眼科用手術顕微鏡では、眼底から返ってくる反射光 (徹照)を観察します。そのため、乱反射の起こりやすい症例などでは、光のロスが増え、徹照がうまく得られません。如何にして光のロスを減らすのか、光学メーカー各社が、日々切磋琢磨しながら研究を続けてきた成果が、手術顕微鏡には詰まっています。
- 顕微鏡を覗きながら処置を行う眼科サージャンにとって、距離・深さの感覚は手術の安全性を左右する重要なポイントです。顕微鏡を通して知覚する距離・深さと、実際の深さにギャップが感じられる場合には、「目で見た感覚よりも1ミリ程度手前で止めるよう意識して処置を行う」という方もいらっしゃるほど。術野をより広く、より立体的に、まるで肉眼で見ているかのような感覚で観察出来る Proveo 8 では、「そういった、距離感のわずかなギャップが全くなかった」というご意見もいただきました。
- 眼科用手術顕微鏡
- Proveo 8
前眼部・後眼部を問わず、手術の全過程にわたって安定したレッドリフレックスと鮮明な組織像を提供する「Proveo 8」。高解像度と深い焦点深度をあわせもつライカ独自の光学設計で、ディテールまで細やかに観察。必要に応じて360°全方向からセットすることができる、広角観察システム(OCULUS社 BIOM 5)を併用することで、硝子体手術中に非接触で眼底を広範囲に観察することも可能。新たに、BIOM 連動フォーカス機能が追加されたことにより、眼球と顕微鏡の距離を一定に維持することができるようになりました。手術を中断することなく眼底を観察できるので、ワークフローがより快適に。