今回から3回にわたり、「超解像STED顕微鏡を知る」をテーマに関連論文をご案内いたします。
ライフサイエンス研究に従事されている皆さまはご存じの通り、STED顕微鏡は平面分解能50nm以下を実現し、従来の光学顕微鏡では見えない細部まで観察することができます。昨今世界では、STED顕微鏡による新たな研究結果が発表されています。今回は、その興味深い事例を2つご紹介いたします。ぜひご研究の参考に、ご一読ください。
がん細胞におけるDNA複製の解明にSTED顕微鏡が貢献
DNA合成は、DNA複製機構と転写共役Rループの接触によって阻害され、がん細胞におけるゲノム不安定性の主要な原因となります。本論文で著者らは、ATP依存性のクロマチンリモデリングINO80複合体がRループの解消を促進し、がん細胞における複製に伴うDNA損傷を防ぐことを明らかにしています。STED顕微鏡を用いて、INO80とRループの共局在をこれまでにない精度で測定されています。STEDの解像度の向上により、共局在イベントの「真」と「偽」を高い確実性で識別することができた事例のご紹介です。
ミトコンドリア膜間空間におけるアポトーシス因子の可視化
サブトコンドリアタンパク質の分布を可視化できる蛍光顕微鏡は、細胞死制御を理解する上で大きな利点となります。Cytochrome CやDIABLO/SMACなどのアポトーシスに関与するミトコンドリア膜間タンパク質を細胞がどのように管理し、制御しているかは完全には解明されていません。本研究では、STED顕微鏡を用いて、2つのアポトーシスエフェクターであるCytochrome CとDIABLO/SMACのサブトコンドリア分布について理解を深めました。平滑筋肉腫の細胞死を誘導するために、タンパク質毒性ストレスを用いました。STED顕微鏡により、ATP合成酵素の均一な分布に比べ、DIABLO/SMACの分布はクラスターであることを明らかにすることができました。これらのクラスターは、Cytochrome Cを含むクラスターと共局在することもありました。結論として、ミトコンドリアの膜間空間には、細胞死をもたらすエフェクターの異なる貯蔵庫が存在することがわかりました。
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